Lyria 3.5とは?新機能・料金・使い方と音楽生成APIの注意点
Googleの音楽生成AI「Lyria 3.5」が公開されました。Googleの公式API更新履歴では、2026年9月3日にPublic Previewとして提供開始したと案内されています。商品紹介動画のBGMやウェビナーのオープニングなど、映像の雰囲気に合う音楽を作りたい担当者にとって、確認したいのは音質だけでなく、料金、曲の長さ、生成後にどこまで調整できるかです。
Lyria 3.5は、音楽のまとまり、自然なボーカル、歌詞、長さや構成の指定を強化したモデルです。Gemini APIではモデルID「lyria-3.5」を指定でき、有料枠の料金は1曲0.08米ドルです。Google DeepMindは最大3分の楽曲生成を案内していますが、納品する動画の尺にぴったり合わせるには、生成後の試聴と編集も必要です。以下は2026年9月5日時点の公式公開情報に基づきます。
本記事のポイント
- Lyria 3.5は2026年9月3日にAPIのPublic Previewとして公開され、音楽・歌詞・ボーカルや構成の制御が改善しています。
- Gemini APIは1曲0.08米ドルで無料枠はなく、アプリの利用条件とは分けて確認する必要があります。
- 動画制作では長さ指定だけに頼らず、候補の試聴、尺と音量の編集、利用条件の確認まで含めて採用を判断します。
Lyria 3.5で何が変わったのか
Gemini APIの公式更新履歴は、Lyria 3.5の改善点として、楽曲全体の一貫性、自然なボーカル、長さと構成の細かな制御を挙げています。Google DeepMindのモデル紹介でも、音楽性・歌詞・ボーカル品質の向上を明記しています。APIについてはPublic Previewであり、一般提供を意味するGAと同じ扱いにはしないことが大切です。
ここでいう楽曲の一貫性とは、イントロから歌の本編、サビ、間奏、終わりまでが一つの曲としてつながることです。短い音の断片だけを作る用途に加え、数分の動画を通して使える音楽の候補を作る場面で、評価したいポイントになります。ただし、改善はGoogleが公表した説明であり、日本語の歌唱精度や採用率の実測値を示すものではありません。
| 観点 | 公式に確認できる内容 | 制作で確認すること |
|---|---|---|
| 音楽・歌詞・ボーカル | 音楽性、歌詞、自然な歌声を改善 | 曲の展開、発音、歌詞の意味が用途に合うか |
| 長さと構成 | プロンプトやタイムスタンプで指定でき、DeepMindは最大3分を案内 | 実際の秒数、場面転換、終わり方を動画に合わせられるか |
| 入力 | テキストと画像に対応 | 映像の雰囲気に加え、楽器・テンポ・歌の有無を言葉で指定する |
| 音声出力 | 44.1kHzのステレオ音声。APIの既定はMP3で、3.5はWAV指定も可能 | 編集ソフトに取り込み、音量や音の切れ方を確認する |
| APIでの生成後の編集 | 単一ターンの生成で、会話を重ねた反復編集には未対応 | 再生成と、編集ソフトで行う調整を使い分ける |
Lyria 3.5の価値は、曲の長さだけでは説明できません。Lyria 3 Pro系にもフル楽曲の生成がありました。3.5への更新は、長尺化だけで説明せず、歌声や音楽のまとまり、希望する構成への追従を含めて捉えると分かりやすくなります。新モデルを試す際の共通の考え方は、業務に合うAIモデルの選定基準でも整理しています。
どこで使える?API・アプリの違いと料金
APIでは「lyria-3.5」を指定する
Gemini APIの音楽生成ガイドに、Lyria 3.5のモデルIDと呼び出し例が掲載されています。利用する経路はInteractions APIです。入力したテキストや画像をもとに、音声と歌詞・曲の構成に関するテキストを含む応答が返ります。
API連携が向いているのは、動画の企画情報から音楽の条件を組み立てたり、複数の案を同じ入力条件で比較したりする場合です。利用できる地域、プロジェクトの課金設定、割り当て、最新のSDK仕様を確認してから組み込みます。モデルIDに「preview」という文字がなくても、公開段階は公式更新履歴で判断します。
Google Flow MusicとGeminiは、画面上の提供条件を確認する
Google DeepMindの公式ページには、Lyria 3.5の項目からGoogle Flow Musicを試すリンクがあります。コーディングをせず、音楽を試聴しながら制作したい場合の候補です。
同じ公式ページにはGeminiの音楽生成への導線もあります。ただし、Lyria全体への案内があることと、すべてのGeminiアカウントで3.5を選択できることは同義ではありません。アプリで利用する場合は、ログイン後のモデル表示、プラン、地域、生成回数の条件を確認してください。APIの単価を、そのままGeminiやFlow Musicの料金として当てはめることもできません。
API料金は1曲0.08米ドル、無料枠はなし
Gemini APIの公式料金表では、Lyria 3.5のFull Songは1リクエスト当たり0.08米ドルで、無料枠はありません。比較対象のLyria 3 Clip Previewは30秒の曲で0.04米ドル、Lyria 3 Pro PreviewのFull Songは0.08米ドルです。旧モデルは料金表でlegacyとして掲載されています。
| モデル | 主な生成対象 | API有料枠の単価 |
|---|---|---|
| Lyria 3.5 | 長さ・構成を指定するフル楽曲 | 1曲0.08米ドル |
| Lyria 3 Clip Preview | 30秒の短いクリップ | 1曲0.04米ドル |
| Lyria 3 Pro Preview | 従来のフル楽曲 | 1曲0.08米ドル |
たとえば3.5で10曲の候補を生成した場合、単価による単純計算は0.80米ドルです。採用が1曲でも、作った候補の分だけ費用を見込みます。この計算には税、為替、別サービスの費用、編集・試聴の作業時間を含みません。導入効果を比べるなら、生成料金だけでなく、採用する1曲が完成するまでの総作業時間を見ると判断しやすくなります。
Lyria 3.5の使い方:動画BGMを作る4ステップ
実務では、用途を決め、音楽の条件を指定し、候補を聴き比べ、最後に映像へ合わせる順番で進めます。生成を始める前に「何秒の、どんな動画で、何を伝えたいか」を一文で書くと、候補が増えても選びやすくなります。

1.BGMか歌入りか、使用する場面を決める
商品説明やインタビューでは、人の声と競合しにくいインストゥルメンタルが候補になります。一方、ブランドの印象を伝える短い映像では、歌入りの曲を検討できます。「何となく明るい曲」だけで始めるより、ナレーションの有無、視聴者、掲載媒体、必要な長さを先に決めた方が、試聴で比較する基準が明確です。
たとえば「製造業向けサービスの90秒紹介動画。ナレーションあり。落ち着きと前向きさを出す。歌は入れない」と決めます。これは制作条件の例であり、90秒ちょうどの出力や特定の表現を保証する指定ではありません。
2.楽器・テンポ・雰囲気・曲の構成を指定する
公式ガイドは、ジャンル、楽器、BPM、キー、ムード、構成、長さの指定を勧めています。BPMは1分間の拍数で、テンポの目安です。数値に慣れていなければ「ゆっくり」「落ち着いた」などの言葉から始め、聴いた結果に合わせて調整しても構いません。
次は商品紹介動画向けのプロンプト例です。公式の動作保証例ではなく、用途から条件を具体化した入力例として使ってください。
90秒程度の商品紹介動画に使うインストゥルメンタル。
歌声は入れない。落ち着いて前向きな雰囲気。
柔らかいエレクトリックピアノ、控えめなベース、軽いパーカッション。
テンポは約95 BPM。ナレーションが聞き取りやすい、密度を抑えた編成。
短いイントロから入り、中盤で少し広がり、最後は自然に終わる構成。
歌入りにする場合は、音楽への指示と歌詞を分け、必要に応じて[Verse](歌の本編)、[Chorus](サビ)、[Bridge](展開を変える部分)などの構成タグを使います。日本語の歌詞が必要なら、日本語で指示し、自社で作成した歌詞を明確に区切って渡す方法が考えられます。自社名や専門用語の読み方は、生成後に必ず耳で確認します。
画像入力を使う場合、APIガイドではテキストと最大10枚の画像を入力できるとしています。完成予定の映像のキービジュアルや、使用権限のある写真から雰囲気を伝えられますが、画像だけでは動画の尺やナレーションの有無は伝わりません。音楽に必要な条件はテキストで補います。
3.候補を生成し、同じ評価項目で聴き比べる
試聴では、歌詞の意味、発音、楽器のバランス、途中の展開、冒頭と末尾の自然さを見ます。歌なしのBGMなら、説明の声を邪魔しないかが優先です。単体でよく聴こえる音楽でも、ナレーションと重ねると音数が多すぎる場合があります。
短い方向性の試行にLyria 3 Clipを使う方法は公式ガイドにもあります。ただし、Clipと3.5はモデルが異なるため、短い試作の雰囲気がフル楽曲で完全に再現されるとは限りません。採用予定のモデルでも候補を作り、実際の映像と合わせて評価します。同じプロンプトでも結果は変わるので、採用した音源そのものを保存してください。
4.尺と音量を編集し、公開条件を確認する
採用した音源を動画編集ソフトに取り込み、必要な長さへ調整し、ナレーションがある区間の音量を下げ、冒頭と末尾を整えます。生成時の長さ指定は希望を伝える方法であり、フレーム単位の映像編集を代替するものではありません。音の切れ方が不自然になる場合は、別候補や再生成も検討します。
動画と音声の工程をまとめて設計したい場合は、AIを使った動画制作の進め方も参考になります。音楽の生成、映像への組み込み、公開前の確認を別々に評価すると、どの工程に時間がかかっているかが分かります。
APIに組み込む場合の最小リクエスト
公式のREST例に沿った、音楽生成リクエストの形は次のとおりです。有効なAPIキーと利用可能な課金プロジェクトを用意し、キーは環境変数などで管理します。これは呼び出し例で、音源を自動保存する処理までを含む完成スクリプトではありません。
POST https://generativelanguage.googleapis.com/v1beta/interactions
Content-Type: application/json
x-goog-api-key: <GEMINI_API_KEY>
{
"model": "lyria-3.5",
"input": "Create a 90-second instrumental track for a product demo. Warm electric piano, light percussion, around 95 BPM, no vocals, sparse arrangement, natural ending."
}
応答には複数のステップやコンテンツブロックが入る場合があります。公式ガイドに従い、音声ブロックのBase64データを取り出して保存します。WAV形式が必要な場合のresponse_format指定も同ガイドにあります。実装では返却された形式と音声ブロックの有無を確認し、歌詞テキストだけを音声ファイルとして保存しないようにします。
業務で使う前に知っておきたい制約と判断基準
生成APIは、会話を重ねて曲の一部を直す機能とは異なる
公式ガイドの制約では、Lyria 3.5の音楽生成は単一ターンであり、複数のプロンプトを重ねて生成済みクリップを編集・改善する処理は未対応とされています。「この曲のサビだけ変更し、ほかを完全に残す」などの編集を、APIの標準機能として前提にしない設計が必要です。
条件を変えて別の曲を生成することと、同じ音源の一部を保持したまま直すことを分けて考えます。サービス側に独自の編集機能があれば、そのサービスの仕様を確認します。この制約はGemini APIの音楽生成ガイドの説明であり、すべての音楽制作アプリの機能を一括して否定するものではありません。
日本語の歌唱、権利、利用規約は別々に確認する
多言語の歌声を生成できても、日本語の固有名詞やアクセントが常に正しいとは限りません。広告の主張や商品の特徴を歌詞にするなら、聞き取れることに加えて、内容が事実と一致するかも確認します。歌詞の自動生成を、広告表現の審査まで任せる機能として扱わないことが大切です。
公式ガイドでは、特定アーティストの声や著作権のある歌詞の生成を求めるプロンプトなどが、安全フィルターでブロックされる対象として挙げられています。音の方向性は、歌手名への依存を避け、声質、楽器、ジャンル、テンポといった音楽上の特徴で伝える方が実務に合います。
また、AI生成だから商用利用や独占的な権利が無条件に保証されるわけではありません。利用するサービスの規約、入力する歌詞や画像の権利、顧客への納品条件、広告や配信プラットフォーム側の条件を確認します。ライブ配信と録画公開で利用場面が変わる場合は、ウェビナーBGMの権利確認のように、音源と用途を対応付けて記録すると管理しやすくなります。
Lyriaで生成した音声には、AI生成音声を識別するためのSynthIDの電子透かしが含まれます。公式説明では人の耳には知覚されないものですが、著作権処理や商用利用の許諾を代わりに済ませる仕組みではありません。
まず1本の動画で、採用までの時間を比較する
Lyria 3.5が検討に合うのは、映像ごとにBGMの雰囲気を変えたい、音楽の候補を複数用意したい、歌詞を含む短いブランド表現を試したい、といった場面です。一方、承認済みの既存曲を厳密に再現する必要がある案件や、同じ曲の一部だけを繰り返し修正する案件では、通常の音楽制作・編集工程が引き続き重要です。
すでに問題なく使えている音源を、公開直後だからという理由だけで置き換える必要はありません。まず1本の動画を対象に、候補数、採用までの試聴時間、編集時間、修正回数、最終的な聞き取りやすさを記録します。ストック音源を探す方法や従来の制作方法と比べて、完成までの手間が減るかを確認してから対象を広げます。
複数部署で使う場合の担当者や確認項目の決め方は、AI活用を組織で進める体制づくりにも通じます。入力した条件、生成日、モデルID、採用した音源、確認した利用規約を残しておくと、別の動画へ流用するときも判断できます。
Lyria 3.5についてよくある質問
Lyria 3.5はいつ公開されましたか?
Gemini APIの公式更新履歴では、2026年9月3日にPublic Previewとして公開されました。APIのモデルIDはlyria-3.5です。各アプリへの提供時期や利用条件は、APIとは分けて確認します。
Lyria 3.5は無料で使えますか?
2026年9月5日時点のGemini API料金表には無料枠がなく、有料枠は1曲0.08米ドルです。GeminiやGoogle Flow Musicのプラン、試用枠、生成上限は別の条件なので、API料金からは判断できません。
何分まで生成できますか?指定した秒数になりますか?
Google DeepMindは最大3分の楽曲を案内しています。APIガイドでは数分の曲を生成でき、長さをプロンプトやタイムスタンプで指定できると説明していますが、厳密な秒数一致の保証とは区別し、実際の音源を確認して編集します。
日本語の歌詞や歌なしのBGMも作れますか?
公式ガイドは、希望する歌詞の言語で指示すること、自分の歌詞を渡すこと、インストゥルメンタルを指定することを案内しています。日本語の歌詞を使う場合も、固有名詞、発音、意味を生成後に試聴して確認します。
Lyria 3.5とLyria RealTimeは同じですか?
異なります。Lyria 3.5は曲やクリップを生成する用途で、リアルタイムに連続した音楽を生成・操作する用途はLyria RealTimeの別ガイドに案内されています。完成した動画用の音源が必要なのか、対話的な音楽体験を作るのかで選びます。
生成した曲の一部だけをAPIで修正できますか?
現在の公式ガイドでは、Lyria 3.5の音楽生成は単一ターンで、会話を重ねて生成済み音源を編集する機能は未対応です。条件を変えた再生成と、動画・音声編集ソフトでの調整を組み合わせます。
動画制作へのAI導入を、小さな検証から進める
音楽生成を含む動画制作の効率化では、どの作業をAIへ任せ、どの品質を人が確認するかを決めることが出発点です。ファネルAiでは、制作・マーケティング業務の整理から、実証実験、運用への組み込みまで支援しています。