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工数から人件費を計算する方法|時間単価・間接業務・案件への配賦を整理

小さな区画に分かれた立方体と時計で人件費の時間配分を表したイラスト

案件ごとの作業時間を集めても、スタッフの給与をどう時間単価に直すか決まっていなければ、原価は比較できません。給与だけを使うのか、賞与や会社負担の社会保険料も含めるのか。研修や待機の時間をどう扱うのかによって、同じ100時間でも計算結果が変わります。

工数から人件費を計算する基本は、費用範囲と対象期間をそろえて標準時間単価を作り、案件の実績時間に掛けることです。本記事では、会社負担込みの人件費を所定労働時間で割る方式を出発点にし、案件へ付かなかった時間や標準と実績の差も月次で照合します。

会社負担込み人件費を所定時間で割った標準単価を案件A・案件B・共通業務へ適用して総額へ照合する図
標準時間単価を案件と共通業務へ適用し、差額も含めて人件費原本へ照合します。

本記事のポイント

  1. 会社負担込み人件費と時間単価の分母を定義し、給与・社会保険料の重複を防ぐ。
  2. 案件工数と共通業務を分け、単価の適用期間と版数を固定して過去の集計を守る。
  3. 案件労務費だけで終わらず、共通業務分・未配賦残・標準差額を給与総額へ照合する。

時間単価へ含める人件費を固定する

人件費の原本には、基本給、対象となる手当、賞与、会社負担の社会保険料などがあります。賞与や年に一度の支出を月額へ直す場合は、対象年度の見込みや社内の計上方針とそろえます。従業員負担分の保険料は給与から控除されるため、給与総額へさらに足すと重複します。どの欄を合計したかを明細で残してください。

交通費、採用費、研修費、福利厚生費、共通ツール費などを人件費単価へ含めるかは、目的によって変わります。比較のために全部を含める方式もありますが、基本の人件費単価と間接費を分けた方が、案件側で改善できる費用を見やすくなります。一度決めた範囲を途中で変える場合は、単価の版と適用日を更新します。

個人別の実額単価は精密に見えますが、給与情報の取り扱いや人員変更の影響が大きくなります。役割や等級ごとに標準単価を置く方法なら、見積時の比較と権限管理が簡単になります。ただし、実際の給与総額との違いは残るので、部門単位で差額を確認する運用が必要です。標準単価を実額そのものと説明しないようにします。

項目確認点
給与・手当対象期間と支給対象をそろえる
賞与見込み配分か実績配分かを固定する
社会保険料会社負担分を使い、従業員負担分を重ねない
残業代単価内に含めるか差額管理するかを決める
共通費単価への上乗せと別途配賦を重ねない

分母を所定労働時間にする方式で計算する

計算例は税抜管理を前提とした架空の数字です。あるスタッフの月当たり会社負担人件費が48万円、基準とする所定労働時間が160時間なら、標準時間単価は3,000円です。案件Aに80時間、案件Bに40時間を使った場合、それぞれ24万円、12万円を案件労務費として計算します。

残り40時間のうち、共通会議、研修、有休、待機などの扱いは社内で区分します。この例では基準時間との差40時間に対応する12万円が案件へ直接配賦されていません。これを消すのではなく、共通業務等に対応する費用や配賦差額として確認します。単価を3,000円としたまま、この12万円を無条件に案件へもう一度均等配賦すると、直接原価と共通費の境界が曖昧になります。

実際の勤務時間が所定労働時間と違う場合や、休暇を工数記録の対象外にしている場合は、160時間すべてを作業ログとして埋める必要はありません。勤怠、休暇、工数の原本を照合し、差に説明を付けます。実績のない時間を架空の案件作業として入力する方法は、原価分析にも労務管理にも使えません。

別の方式として、年間の人件費を見込請求可能時間で割り、案件へ付かない時間の費用を含めた回収用の単価を作ることもあります。この単価は価格設定には役立ちますが、所定労働時間を分母にする原価単価とは目的が異なります。同じ案件へ二つの単価を混ぜたり、回収用単価へ含めた共通費をさらに足したりしないでください。

稼働率の定義も分母に影響します。案件作業時間を所定時間で割る比率と、請求対象時間を実労働時間で割る比率を同じ名前で比較しないようにします。時間の区分をそろえる方法は、スタッフの稼働・工数管理で整理しています。

単価マスタには適用期間と権限を持たせる

単価マスタは、スタッフIDまたは役割ID、単価、単価の種類、適用開始日、適用終了日、費用範囲、承認者を持つと扱いやすくなります。昇給や役割変更があっても、過去の工数は当時の適用単価で計算します。今日の単価を全期間へ掛け直すと、過去案件の採算が毎月変わってしまいます。

見積時の単価と実績集計用の単価を区別することも重要です。受注時には役割別の標準単価、実績には実際の担当者または配属部門の標準単価を使う運用が考えられます。差が出た場合は、作業時間の超過と、担当構成や単価の変化を分けて分析します。担当者を変更した結果の差を、すべて作業の遅れとして扱わないようにします。

給与に関係する値はアクセスを限定します。共有スプレッドシートの非表示列や保護範囲だけでは、閲覧権限を持つ相手から完全に秘匿できるとは限りません。一般スタッフの入力表と、人件費単価を持つ管理用の保存先を分け、共有範囲を確認します。現場向けの画面には時間と進捗だけを表示する設計も有効です。

業務委託スタッフは、自社従業員の給与換算と同じ式にしない場合があります。時間契約なら承認時間と契約単価、成果物契約なら発注額と検収条件を基準にします。固定額の外注費に、同じ人の作業時間から計算した費用を重ねないようにしてください。作業時間は納期や負荷を把握するために残しても、原価計上は契約単位で一度だけ行います。

月次で給与原本と配賦額の差を説明する

月次には、実際の対象人件費、案件へ配賦した労務費、共通業務へ付けた費用、配賦差額を並べます。この四つがつながることが重要です。差額の原因には、標準単価の設定差、対象期間の違い、残業代、休暇、工数未提出、単価未登録などがあります。単なる「その他」にまとめず、改善できるものを先に分けます。

例えば実際の対象人件費が50万円で、標準単価による総配賦額が48万円なら、2万円の差が残ります。差額を案件へ追加配賦する方式も、部門でまとめて管理する方式も考えられますが、どちらを採るかを事前に決めます。毎月利益の少ない案件だけへ差額を寄せるような調整は、案件比較をゆがめます。

工数未提出を単価ゼロや時間ゼロで処理すると、案件原価が過少になります。未提出件数と対象時間の見込みを別欄に出し、締め前に確認します。見込み値を暫定計上する場合は、後で実績へ置き換える手順と履歴を残します。推定値と実測値を混ぜたまま利益率だけを共有しないことが大切です。

最終的には、案件別原価管理で使う直接原価と、この人件費配賦額が一致するかを確認します。外注費や経費の集計は別の原本から来るため、スタッフの原価だけ正確でも案件全体の採算が正しいとは限りません。対象月、案件ID、税区分、取消の扱いまでそろえて照合します。

原価単価を見積や人員計画に使うときの注意点

原価単価は販売単価ではありません。1時間の原価が3,000円だからといって3,000円で販売すれば、共通費や利益を回収できない可能性があります。目標とする利益率や契約上のリスク、請求対象外の作業、顧客に提供する価値を合わせて価格を考えます。時間当たりで販売しない成果物契約でも、内部の採算点検には工数原価を使えます。

また、短期の人員配置では、既に雇用しているスタッフの固定給与が追加の案件を受けるかどうかで直ちに変わるとは限りません。長期の原価回収と、今週の外注判断に必要な追加支出は別の観点です。余力のある社内スタッフと外注を比べるときは、原価単価だけでなく他の案件を引き受ける機会も確認します。

契約・人材・管理責任の違いは、業務委託人材の紹介とBPOの違いにも関係します。単価が安いという理由だけで委託形態を決めず、誰が作業を管理し、成果を確認するかまでそろえて判断してください。

よくある質問

人件費の時間単価はどう計算しますか?

一つの方法は、会社負担込みの対象人件費を所定労働時間で割る計算です。月48万円、160時間なら1時間3,000円になります。給与、賞与の期間配分、会社負担の社会保険料など、含める費用を定めてください。案件に使った時間だけを分母にする方式とは意味が違うため、同じ単価として比較しないようにします。

社会保険料は本人負担と会社負担の両方を加えますか?

給与総額を分子にしているなら、本人負担分はすでに給与総額の中に含まれています。会社が別に負担する部分を加える考え方で、本人負担分をさらに加えると重複になります。給与原本のどの項目を使うかを確認し、支給額と振込手取額を混同しないようにしてください。具体的な費目と期間配分は経理・給与担当者とそろえます。

有休・研修・待機の時間はどう扱いますか?

案件の実作業とは分け、社内ルールに応じて共通業務、非案件時間、未配賦残などとして管理します。すべてを案件へ押し込めると見積と実績の関係が分かりにくくなります。所定時間を基準に標準単価を作った場合も、実際に配賦した金額と給与総額の差を月次に照合し、その理由を説明できる状態にします。

役割別の標準単価でも原価管理はできますか?

できます。個人の給与情報を現場へ開示せず集計しやすい一方、役割構成や実際の給与との差が生じます。適用開始日と終了日、単価版を持ち、過去の工数が最新単価で書き換わらないようにします。標準労務費と実際人件費の差額を別に管理し、標準単価の精度を定期的に見直してください。

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