本文へスキップ

Gemini Embedding 2とは?マルチモーダル検索・RAGで何が変わるかを実務目線で解説

Gemini Embedding 2とは?マルチモーダル検索・RAGで何が変わるかを実務目線で解説

Gemini Embedding 2は、GoogleがGemini APIとVertex AI向けに提供するエンベディングモデルです。2026年3月10日のGoogle公式発表ではPublic Previewとして紹介され、2026年4月更新のGemini APIドキュメントではモデルコード gemini-embedding-2 の安定版として掲載されています。

結論から言うと、Gemini Embedding 2の重要点は「テキスト用エンベディングが少し強くなった」ことではありません。テキスト、画像、動画、音声、PDFを同じ埋め込み空間に写像できるため、RAG、セマンティック検索、分類、クラスタリングで扱えるデータの範囲が広がります。一方で、既存の gemini-embedding-001 とはベクトル空間が互換ではないため、移行時は既存データの再埋め込みと検索評価が必須です。

Gemini Embedding 2でテキスト、画像、動画、音声、PDFを同じ検索基盤へ接続する流れを整理した図
Gemini Embedding 2は複数のモダリティを同じ埋め込み空間へ写像できるため、RAGや検索基盤では入力データ、ベクトルDB、評価、権限管理を一体で設計する必要があります。

本記事のポイント

  1. Gemini Embedding 2は、テキストだけでなく画像、動画、音声、PDFも同じ空間で扱えるマルチモーダル エンベディングモデルです。
  2. gemini-embedding-001とはベクトル空間が互換ではないため、既存のRAGや検索インデックスは段階移行ではなく再埋め込みが必要です。
  3. 導入判断ではモデル性能だけでなく、次元数、保存コスト、評価データ、権限、監査、入力データの扱いを先に決めるべきです。

この記事で扱うテーマ

関連キーワード

  • Gemini Embedding 2
  • gemini-embedding-2
  • Gemini Embedding 2 とは
  • Gemini Embedding 2 RAG
  • Gemini Embedding 2 使い方
  • Gemini Embedding 2 移行

このページで答える質問

  • Gemini Embedding 2とは何ですか?
  • Gemini Embedding 2とgemini-embedding-001の違いは何ですか?
  • Gemini Embedding 2はRAGやセマンティック検索でどう使えますか?
  • Gemini Embedding 2へ移行するときの注意点は何ですか?

Gemini Embedding 2とは何か

エンベディングとは、文章、画像、音声などの内容を数値ベクトルに変換する技術です。意味が近いデータほどベクトル空間上で近くなるため、キーワード一致では拾いにくい情報検索、類似文書検索、分類、クラスタリング、RAG の検索部分に使われます。

Googleの 公式発表 では、Gemini Embedding 2はGeminiアーキテクチャをもとにした初の本格的なマルチモーダル エンベディングモデルとして説明されています。テキスト、画像、動画、音声、ドキュメントを単一の埋め込み空間に写像し、100以上の言語にまたがる意味理解を扱えることが特徴です。

Gemini APIの エンベディング ドキュメント では、モデルコードは gemini-embedding-2 とされています。テキストのみの用途では gemini-embedding-001 も引き続き使えますが、画像、動画、音声、PDFまで含めた横断検索を設計するなら、Gemini Embedding 2を前提に検討する価値があります。

Gemini Embedding 2は、文章検索の部品ではなく、複数形式の業務データを同じ意味空間で扱うための検索・RAG基盤モデルです。

gemini-embedding-001との違い

従来の gemini-embedding-001 はテキスト向けのエンベディングモデルです。営業FAQ、社内ナレッジ、商品説明、議事録、ヘルプページなど、文字情報を検索対象にする場合は今でも選択肢になります。Gemini Embedding 2はそこから一歩進み、画像、動画、音声、PDFを同じ検索対象へ含められる点が大きな違いです。

比較軸gemini-embedding-001gemini-embedding-2
主な入力テキストテキスト、画像、動画、音声、PDF
入力トークン上限2,0488,192
出力次元128から3,072、推奨は768、1,536、3,072128から3,072、推奨は768、1,536、3,072
タスクタイプ指定RETRIEVAL_DOCUMENT などを指定タスクタイプ指定ではなく、テキスト用途では指示をプロンプト側へ含める
移行互換性既存インデックス内で継続利用できる001と直接比較できないため再埋め込みが必要

特に重要なのは互換性です。Gemini APIドキュメントでは、gemini-embedding-001gemini-embedding-2 の埋め込み空間は互換ではないと説明されています。つまり、既存のベクトルDBに001で作ったベクトルが入っている状態で、クエリだけGemini Embedding 2に切り替える、といった移行はできません。

移行するなら、文書、FAQ、営業資料、PDF、画像、動画などの検索対象をすべて新モデルで再埋め込みし、検索評価をやり直します。既存RAGの改善を狙う場合も、モデル差し替えだけで完了ではなく、チャンク設計、メタデータ、検索評価、回答品質評価まで同時に見直す必要があります。RAG全体の設計は AIエージェント運用手順書テンプレート のように、実行ログと評価基準まで含めて整えると運用しやすくなります。

マルチモーダル検索とRAGで何が変わるか

Gemini Embedding 2が効くのは、検索対象がテキストだけではない業務です。たとえば、営業資料のPDF、展示会ブースの写真、商談録画、製品デモ動画、サポート通話、社内マニュアル、提案書、過去のクリエイティブをまとめて検索したい場合、従来はそれぞれをテキスト化してから検索基盤に入れる必要がありました。

テキスト化は今後も重要ですが、画像や音声の情報をすべて文字に変換すると、表情、構図、雰囲気、非言語情報、動画内の視覚的変化が落ちることがあります。Gemini Embedding 2は、画像や音声、動画を直接埋め込めるため、テキスト化だけに頼る検索よりも、元データの意味を残した検索設計に近づきます。

業務データ検索したいこと実務上の使い道
営業資料PDF似た提案構成、業界別の訴求、過去資料の再利用提案書作成、商談準備、ナレッジ検索
商談録画顧客が反応した場面、説明が詰まった場面、デモ内容営業育成、FAQ整備、オンボーディング改善
商品画像・施工写真似た見た目、用途、現場状況、比較対象製造業、建材、EC、フィールドセールスの検索
音声ログ問い合わせ意図、感情、よくある質問、クレーム傾向CS分析、営業通話分析、品質管理
広告・LPクリエイティブ似た構図、訴求、業界、反応のよかったパターンBtoBマーケティング、制作ナレッジ、ABテスト管理

RAGで見ると、Gemini Embedding 2は「検索対象を広げる」役割を持ちます。回答生成モデルそのものではなく、生成前に必要な根拠を探す部分に効きます。たとえば、営業担当者が「この業界向けに似た提案を探して」と聞いたときに、文章の議事録だけでなく、PDF資料、過去デモ動画、画像付き事例も候補に出せるようになります。

ただし、マルチモーダル化したからといって、すべてを一つの箱に放り込めばよいわけではありません。営業資料、契約書、録画、サポート音声は、権限、保存期間、利用目的が違います。検索精度だけを見て統合すると、閲覧権限のない資料が検索結果に混ざる、退職者の録画が残り続ける、顧客情報を不要に広げる、といった問題が起きます。Google Workspace上の顧客データを扱う場合は、Google Driveの顧客データをGeminiで扱う前の確認項目 と同じく、共有範囲とDLPを先に確認する必要があります。

仕様と制限を実務目線で見る

Gemini APIドキュメントでは、Gemini Embedding 2の入力上限は全体で8,192トークンとされています。画像は1リクエスト最大6枚でPNGとJPEG、音声は最大180秒でMP3とWAV、動画は最大120秒でMP4とMOV、PDFも入力できます。動画では処理されるフレーム数や音声トラックの扱いに制約があるため、動画検索では「動画全体を完全に理解する」と期待しすぎない方が安全です。

出力次元は128から3,072まで柔軟に設定でき、Googleは高品質用途で3,072、1,536、768を推奨しています。次元数を大きくすると表現力は上がりやすい一方、ベクトルDBの保存容量、検索メモリ、インデックス再構築時間、コストが増えます。実務では、最初から最大次元だけで決めず、候補次元ごとに検索評価を行うべきです。

設計項目見るべきポイント失敗しやすい判断
次元数検索品質、保存容量、検索速度、再インデックス時間最大次元なら常に最適だと決める
チャンク設計PDFや議事録をどの粒度で分けるか文章、PDF、動画を同じ粒度で切る
メタデータ部署、顧客、業界、日付、権限、ソース種別ベクトルだけ保存して絞り込みができない
評価データ実際の検索クエリ、正解候補、NG候補デモ用の数件だけで本番判断する
権限管理検索時にユーザー権限でフィルタできるか取り込み時だけ権限を見て検索時に落とす

また、Gemini Embedding 2では、デフォルト以外の次元でも自動正規化が導入されています。これは、セマンティック類似性をベクトルの大きさではなく方向で扱いやすくするための改善です。ただし、正規化の有無だけで検索品質が決まるわけではありません。RAGでは、埋め込みモデル、チャンク、メタデータ、再ランキング、プロンプト、回答評価が連動します。

移行と導入の進め方

既に gemini-embedding-001 や別モデルでRAGを運用している場合、Gemini Embedding 2への移行は「API名を変えるだけ」ではありません。ベクトル空間が変わるため、既存のインデックスを温存したままクエリ側だけ切り替えると、類似度の意味が崩れます。再埋め込み、インデックス再構築、検索評価、ロールバック手順をセットで計画します。

  1. 既存の検索対象を、テキスト、PDF、画像、動画、音声に分けて棚卸しする。
  2. 各データに閲覧権限、保存期間、利用目的、除外条件のメタデータを付ける。
  3. 実際の検索クエリと正解候補を集め、移行前後の評価セットを作る。
  4. 768、1,536、3,072など複数の次元で小さく検証し、品質とコストを比較する。
  5. 新旧インデックスを並行運用し、検索品質と回答品質を比較してから切り替える。
  6. 本番移行後も、検索失敗、権限違反、回答根拠の不足を定期的にレビューする。

新規導入の場合も、最初から全データを対象にしない方が現実的です。たとえば、営業提案書PDFと商談メモだけ、問い合わせFAQとサポート音声だけ、製品画像と仕様書だけ、というように、検索意図が明確な1領域から始めます。AIエージェントや検索基盤の導入では、範囲を広げるより先に評価しやすい対象を選ぶことが重要です。

企業の営業・マーケティング基盤では、Gemini Embedding 2を単体のAPIとして見るより、CRM、Google Drive、商談ログ、メール、フォーム、ナレッジベースの接続点として見るべきです。CRM側の顧客情報が崩れていると、どれだけ埋め込みモデルが強くても検索結果の権限管理や顧客単位の集約が難しくなります。CRMの情報設計は Headless CRMの選び方 のように、AIエージェントが扱う業務基盤として考える必要があります。

企業利用で確認すべき注意点

Gemini Embedding 2は便利ですが、扱うデータが広がるほどガバナンスも重くなります。特に、音声、動画、PDF、画像を検索対象に入れると、個人情報、契約情報、顧客名、顔、音声、未公開資料が混ざりやすくなります。入力データの権利と利用目的を確認せずに、全社ナレッジとして取り込むのは危険です。

1. 入力データの権利と同意を確認する

商談録画、通話音声、顧客資料、展示会写真、PDF契約書を埋め込む場合、そのデータを検索基盤に投入してよいかを確認します。生成AIに読ませるかどうか以前に、社内検索基盤へ保存してよいデータか、保存期間は何年か、削除依頼が来たらどう消すかを決めます。

2. ベクトルDBの権限を検索時に効かせる

取り込み時に部門別のフォルダを分けても、検索時に権限フィルタが効かなければ意味がありません。ユーザー、部署、顧客、案件、機密区分、公開可否をメタデータとして持ち、検索時に必ずフィルタできる設計が必要です。

3. 評価セットを作ってから本番化する

エンベディングモデルの良し悪しは、ベンチマークだけでは判断できません。自社の検索クエリ、自社の正解資料、自社のNG資料で評価します。営業現場なら「この業界向けの過去提案」「似た失注理由」「この機能を説明した動画」など、実際に検索される問いを集める必要があります。

4. 生成モデルと埋め込みモデルを混同しない

Gemini Embedding 2は回答文を生成するモデルではありません。検索対象をベクトル化し、関連する根拠を探すためのモデルです。RAGでは、埋め込みモデルで候補を探し、必要に応じて再ランキングし、生成モデルに根拠を渡して回答させます。検索品質と回答品質は分けて評価します。

5. 既存インデックスのロールバックを用意する

移行後に検索品質が下がる、特定部署の資料が出ない、逆に出てはいけない資料が出る、といった問題が起きる可能性があります。新旧インデックスを一定期間並行運用し、すぐ戻せる状態を残してから切り替えるのが安全です。

よくある質問

Gemini Embedding 2とは何ですか?

Gemini Embedding 2は、Googleが提供するマルチモーダル エンベディングモデルです。テキスト、画像、動画、音声、PDFを数値ベクトルへ変換し、RAG、セマンティック検索、分類、クラスタリングなどに使えます。

Gemini Embedding 2とgemini-embedding-001の違いは何ですか?

大きな違いは、対応する入力データと互換性です。gemini-embedding-001はテキスト向けですが、Gemini Embedding 2はテキストに加えて画像、動画、音声、PDFも扱えます。ただし、両者のベクトル空間は互換ではないため、既存インデックスを直接混ぜて比較することはできません。

Gemini Embedding 2はRAGでどう使いますか?

RAGでは、社内文書、PDF、画像、動画、音声などをGemini Embedding 2でベクトル化し、ユーザーの質問に近い根拠を検索します。その根拠を生成モデルに渡すことで、回答の根拠を補強します。回答文を作る役割ではなく、根拠を探す役割だと考えると分かりやすいです。

出力次元は何を選べばよいですか?

Googleは768、1,536、3,072を推奨次元として示しています。品質を重視するなら大きい次元を試す価値がありますが、保存容量と検索コストも増えます。実務では、自社の評価セットで768、1,536、3,072を比較し、品質とコストのバランスで決めるのが現実的です。

Gemini Embedding 2へ移行するときの注意点は?

既存のgemini-embedding-001や別モデルのベクトルと互換ではない点が最大の注意点です。移行時は、検索対象をすべて再埋め込みし、新しいベクトルDBインデックスを作り、検索評価をやり直します。権限フィルタ、削除手順、ロールバックも同時に用意します。


関連ページと関連記事

Gemini Embedding 2は、AIエージェント、Google Workspace、AI検索、CRM基盤をつなぐ部品として見ると導入判断がしやすくなります。

マルチモーダル検索やRAG基盤を業務に組み込みたい場合

Gemini Embedding 2、Vertex AI、Google Workspace、CRMをつないだ検索・RAG基盤を作るには、モデル選定だけでなく、データ棚卸し、権限、評価、運用ログの設計が必要です。

お問い合わせはこちら

メディア一覧へ戻る