AARRRモデル(海賊指標)とは?SaaSの成長に不可欠な5つの指標を徹底解説 – ファネルAi
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AARRRモデル(海賊指標)とは?SaaSの成長に不可欠な5つの指標を徹底解説

1. AARRRモデルは、ユーザーの成長プロセスをAcquisition(獲得)→Activation(活性化)→Retention(継続)→Referral(紹介)→Revenue(収益)の5段階で捉えるフレームワーク。

2. 登録者数やPV数といった「虚栄の指標」ではなく、ユーザーがサービスの価値を体感し、定着し、収益化に至るまでの各段階を可視化することで、真の課題が見えるようになる。

3. 特にSaaSにおいては、新規獲得よりも「Retention(継続)」を最優先で改善すべき。穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるビジネスは長続きしない。

「新規登録者数が過去最高を更新しました!」「アプリのダウンロード数が10万を突破しました!」——こうした報告を聞くと、なんとなく事業がうまくいっているような気がします。しかし、その数字をもとに経営判断を下していると、気づいたときには手遅れになっていた、という話は決して珍しくありません。

私自身、以前あるスタートアップの成長支援に関わっていたとき、まさにこの問題に直面しました。毎月の登録者数は順調に増えているのに、売上はほとんど横ばい。広告費を増やせば登録者は増えるけれど、その分だけ赤字も膨らむ。原因を探っていくと、見るべき数字を根本的に間違えていたことが判明しました。

SaaSやサブスクリプションビジネスにおいて、「ユーザー数」や「PV数」といった派手な数字は、時として本質を見えにくくします。本当に追うべきは、ユーザーがサービスの価値を感じ、定着し、収益を生み出すまでの「深さ」を測る指標です。

今回は、シリコンバレーの著名な投資家デイブ・マクルーア氏が提唱し、今やSaaSビジネスの共通言語となった成長フレームワーク「AARRR(アー)モデル」について、その本質と実践的な活用法を掘り下げていきます。


AARRRモデルとは何か——「虚栄の指標」を捨てるためのフレームワーク

AARRRモデルとは、サービスの成長プロセスを5つの段階に分解し、それぞれの段階で適切な指標を設定・計測するためのフレームワークです。Acquisition、Activation、Retention、Referral、Revenueの頭文字をつなげると「Arrrr!」と海賊が唸り声をあげるように聞こえることから、「海賊指標(Pirate Metrics)」というユニークな愛称で親しまれています。

このモデルが革命的だったのは、それまでマーケティングの主役だった「ユーザー獲得(集客)」という視点を、「獲得したあとのユーザー行動」へと強制的に拡張させた点にあります。

従来のマーケティングでは、とにかく人を集めることに注力しがちでした。広告を出稿し、キャンペーンを打ち、SNSでバズを狙う。その結果、「今月は1万人の新規登録がありました」と報告できれば、なんとなく仕事をした気になれます。しかし、その1万人のうち、実際にサービスを使い続けてくれるのは何人でしょうか。課金してくれるのは何人でしょうか。

AARRRモデルは、この「その後」を可視化します。ダウンロード数や登録者数は単なる入り口に過ぎません。その後の「定着」や「課金」までを一本の線で捉えなければ、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けることになってしまうのです。


5つのステップで読み解くユーザーの「成長ストーリー」

AARRRの5段階は、ユーザーがサービスと出会い、熱狂的なファンになるまでのストーリーそのものです。各フェーズで何を目指し、何を計測すべきか、具体的に見ていきましょう。

Acquisition(獲得):ユーザーはどこからやってきたのか

最初の段階は「Acquisition(獲得)」です。SNS、SEO、Web広告、口コミなど、さまざまなチャネルを経て、ユーザーがランディングページに到達し、サインアップ(登録)するまでの流れがここに含まれます。

この段階で計測すべき指標としては、チャネル別の訪問者数、登録率(コンバージョン率)、獲得単価(CAC)などが挙げられます。ただし、ここで重要なのは単に数を追うことではありません。むしろ、「どのチャネルから来たユーザーが、最も質が高いか」を見極めることが本質です。

「質が高い」とは、次のステップであるActivationやRetentionに進みやすいユーザーのことを指します。コストをかけて100人集めても、翌日に全員いなくなれば意味がありません。逆に、10人しか集められなくても、その10人がずっと使い続けてくれるなら、そちらの方がはるかに価値があります。

Activation(活性化):ユーザーは「アハ体験」をしたか

2つ目の段階「Activation(活性化)」は、SaaSにおける最初の大きな壁です。そして、多くの担当者が陥る罠がここにあります。

「アプリをインストールした」「アカウント登録をした」——これらはActivationではありません。真のActivationとは、ユーザーがそのサービスの価値を肌で感じ、「これは便利だ!」「面白い!」という感動を得た瞬間を指します。よく「アハ体験(Aha Moment)」と呼ばれるものです。

このアハ体験は、サービスによって異なります。たとえば、Slackであれば「初めてチームメンバーとメッセージを交換した瞬間」かもしれません。会計ソフトであれば「最初の請求書を作成できた瞬間」でしょう。Spotifyであれば「自分の好みに合ったプレイリストが自動生成された瞬間」かもしれません。

自社のサービスにおいて、何をもってActivationとするのか。この定義が曖昧なままでは、後続の指標もすべてぼやけてしまいます。初回利用時のチュートリアル(オンボーディング)が重要視されるのは、まさにこのActivationを確実に起こさせるためです。

Retention(継続):ユーザーは戻ってきてくれるか

3つ目の段階「Retention(継続)」は、サブスクリプションモデルにおいて最も重要な指標です。一度サービスを使ったユーザーが、翌日、翌週、翌月も戻ってきてくれるかどうか。

どんなに大量のユーザーを獲得しても、この継続率が低ければ、すべてが無駄になります。穴の空いたバケツに水を注ぎ続けるようなもので、広告費ばかりが嵩み、ビジネスはいずれ破綻します。

多くの成功したSaaS企業は、新規獲得よりも先に、まずこの「継続率の改善」に全リソースを注ぎ込みます。プロダクト・マーケット・フィット(PMF)が達成できているかを測る最良の指標も、このRetentionにあると言われています。ユーザーが離れていくなら、それは市場が求めているものと、提供しているプロダクトの間にギャップがあるということです。

Referral(紹介):ユーザーは友人を連れてきてくれるか

4つ目の段階「Referral(紹介)」は、サービスに満足したユーザーが、周囲に推奨してくれる段階です。「このツール、すごく便利だよ」という口コミや、招待コードを使った友人紹介がこれにあたります。

この段階が機能し始めると、広告費をかけずに新規ユーザーを獲得できるようになります。いわゆる「バイラル(ウイルス的な拡散)」が起きている状態です。紹介経由で来たユーザーは、広告経由のユーザーよりも継続率が高い傾向があるとも言われています。信頼する友人からの推薦なので、最初から期待値が適切に設定されているためでしょう。

Referralを促進するためには、紹介のハードルを下げる仕組み(招待機能、紹介特典など)も大切ですが、根本的にはサービスの質が問われます。人に勧めたくなるほど良いサービスでなければ、どんなインセンティブを用意しても限界があります。

Revenue(収益):ユーザーはお金を払ってくれるか

最終段階の「Revenue(収益)」は、文字通り収益化です。無料プランから有料プランへのアップグレード、課金行動、契約更新などがここに含まれます。

AARRRモデルの面白いところは、収益(Revenue)が最後に位置している点です。モデルの解釈によっては順番が入れ替わることもありますが、基本的な思想として「体験させ(Activation)、定着させれば(Retention)、収益は後からついてくる」という考え方が根底にあります。

最初から「いかに課金させるか」ばかりを考えていると、ユーザー体験を損なう施策に走りがちです。しかし、サブスクリプションモデルでは、一度の課金よりも長期間の継続が重要です。目先の売上を追うあまり、将来の収益を失っては本末転倒です。


AARRRの5段階を比較する

ここまで説明してきた5つの段階を、表形式で整理しておきます。

段階意味問い代表的な指標
Acquisition獲得ユーザーはどこから来たか?訪問者数、登録率、CAC(獲得単価)
Activation活性化ユーザーは価値を体感したか?アハ体験の到達率、オンボーディング完了率
Retention継続ユーザーは戻ってきているか?DAU/MAU比率、継続率、解約率
Referral紹介ユーザーは他人を紹介しているか?紹介数、バイラル係数、NPS
Revenue収益ユーザーは課金しているか?ARPU、LTV、有料転換率

この表を見ると、各段階で「何を問うべきか」「何を計測すべきか」が明確になります。自社のダッシュボードに、これらの指標が揃っているかどうか、チェックしてみてください。


現代のSaaSでは「順序」が変わることもある

基本のAARRRモデルは上記の通りですが、近年のSaaS、特にPLG(Product-Led Growth:製品主導の成長)の文脈においては、優先順位やプロセスの順序を入れ替えて考えるケースが増えています。

「RARRA」モデルへの進化

特に重視されているのが、Retention(継続)の優先度です。従来のAARRRモデルでは、まずAcquisition(獲得)から考えがちでした。しかし、いくら新規ユーザーを集めても、すぐに離脱されてしまうようでは意味がありません。穴の空いたバケツを直さないまま、水を注ぎ続けるようなものです。

そこで提唱されているのが「RARRA(ララ)」モデルです。Retention → Activation → Referral → Revenue → Acquisitionという順序で、まずは少数のユーザーでもいいから確実に定着(Retention)させることを最優先とします。そして、定着したユーザーに紹介(Referral)してもらい、有機的に成長していく。

この考え方は、特にリソースの限られたスタートアップにおいて有効です。広告費を潤沢に使えない状況では、まず「絶対に解約されない強固なプロダクト」を作ることに集中し、少数のロイヤルユーザーを起点に拡大していく戦略が現実的だからです。


私がAARRRモデルで学んだ「Activation定義」の重要性

ここからは、少し私自身の経験をお話しさせてください。

以前、あるBtoB SaaSの成長支援に関わっていたとき、チームが頭を悩ませていたのは「Activationの定義」でした。そのサービスは、無料トライアルで利用を開始し、一定期間後に有料プランへ移行するモデルでした。問題は、無料トライアルから有料への転換率が非常に低いことでした。

最初、チームは「登録完了」をActivationと定義していました。しかし、登録しただけで何もせずに離脱するユーザーが大半だったのです。そこで、ユーザーの行動データを分析し、「有料転換したユーザーは、トライアル期間中に何をしていたか」を調べました。

すると、有料転換したユーザーの多くは、トライアル開始から3日以内に「特定の機能を3回以上使っている」ことが判明しました。この「特定の機能を3回以上使用」を新しいActivationの定義として設定し、そこに至るまでのオンボーディングを徹底的に改善しました。

結果として、Activation率が大幅に向上し、それに伴って有料転換率も改善しました。この経験から学んだのは、Activationの定義は「なんとなく」で決めてはいけないということです。データに基づき、「この行動を取ったユーザーは、その後も継続・課金する確率が高い」という因果関係(あるいは強い相関関係)を見つけ出し、それをActivationと定義することが重要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. AARRRモデルはSaaS以外のビジネスにも使えますか?

もともとはSaaSやアプリビジネス向けに提唱されたモデルですが、考え方自体は他のビジネスにも応用可能です。ECサイトであれば、初回購入→リピート購入→口コミ投稿という流れをAARRRで整理できます。ただし、各段階の定義や指標は、自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズする必要があります。

Q2. 5つの段階すべてを同時に改善すべきですか?

リソースが限られている場合は、優先順位をつけるべきです。一般的には、まずRetention(継続)を改善することが推奨されます。継続率が低いままAcquisition(獲得)にコストをかけても、すぐに離脱されてしまうからです。Retentionが一定水準に達してから、他の段階の改善に着手するのが効率的です。

Q3. Activationの定義はどうやって決めればいいですか?

データ分析に基づいて決めるのが理想です。既存ユーザーの行動データを分析し、「継続しているユーザー」と「離脱したユーザー」の間で、初期の行動にどのような違いがあるかを調べます。継続ユーザーに共通する特定の行動(特定の機能を使う、特定の設定を完了するなど)が見つかれば、それをActivationの定義とします。

Q4. RARRAモデルとAARRRモデル、どちらを使うべきですか?

どちらも本質的には同じフレームワークです。違いは「どこから優先的に取り組むか」という順序の問題です。新規獲得のコストが高い、または継続率に課題があると感じているなら、RARRA的なアプローチ(Retentionを最優先)が有効でしょう。すでに継続率が高く、成長のボトルネックが認知・獲得にあるなら、AARRR的なアプローチも選択肢になります。


まとめ:あなたのダッシュボードは「海賊」仕様になっているか

「今月のPV数は過去最高です!」——そんな報告を聞いても、海賊(グロースハッカー)たちは満足しません。「で、そのうち何人が『アハ体験』をしたんだ?」「翌週戻ってきたのは何%だ?」と問い詰めることでしょう。

AARRRモデルを取り入れることは、単に追跡する指標を変えることではありません。組織の意識を、「見栄えの良い数字」から「事業の生存に関わる本質的な数字」へと変革することです。

登録者数やダウンロード数といった「虚栄の指標」に踊らされていては、真の課題は見えてきません。ユーザーがどこで離脱しているのか、どこにボトルネックがあるのか。AARRRの5段階で分解することで、初めて的確な打ち手が見えてきます。

まずは自社のサービスにおいて、何をもって「Activation(活性化)」とするのか。その定義をチームで話し合うところから始めてみてはいかがでしょうか。曖昧だった「成長」という概念に輪郭を与え、具体的なアクションにつなげる。それが、海賊たちの航海の第一歩です。

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