医薬品等適正広告基準(14項)—実務運用のための解説

医薬品等適正広告基準は、紙・Web・SNS・動画・屋外・メール・インフルエンサー投稿までを横断するルールです。運用の軸は「承認情報の範囲内」「事実ベース」「誤認の未然防止」。制作段階からNGを避ける設計を仕込み、コピーと演出の両面で誇張や保証を排除することが鍵になります。
基準の全体像と適用範囲
- 対象媒体:すべて(社内資料の外部転用、検索流出にも注意)。
- 基本姿勢:承認範囲の厳守/最大級・断定・保証の抑制/読者の誤認可能性を先回りで潰す。
- つまずきやすい点:体験談・ビフォーアフター風表現、浸透アニメ、医師等の推薦示唆、医療用の一般向け露出、比較の根拠不足。
各項の要点と運用ヒント(テキスト版)
名称の扱い
- 避ける:愛称だけ、誤読を招く表記、勝手なローマ字化。
- OKの書き方:承認名(または一般名)をはっきり併記。シリーズ名だけで走る場合は誤認防止の補足を添える。
製造方法・品質表現
- 避ける:「世界最高」「秘伝製法」などの最大級・神秘化。
- OKの書き方:工程・設備・規格・試験体制など検証可能な事実のみ。優位性は同条件比較+根拠が揃うときだけ。
効能効果・性能・安全性
- 避ける:承認外暗示、体験談の断定、ビフォーアフター風、浸透アニメ、部位に効く擬似図、「副作用なし」保証。
- OKの書き方:効能は承認範囲内に限定。安全性は注意事項とセットで中立に。
過量消費・乱用防止
- 避ける:「多いほど効く」「毎日多めに」。
- OKの書き方:用法・用量と注意喚起を簡潔に。過剰連想を生まない言い回しに。
医療用の一般向け広告の禁止
- 避ける:医療用資材の一般可視化(検索流出、直リンク)。
- OKの書き方:アクセス制御と配布導線の点検。医療関係者向けの閉じた環境で運用。
一般向け効能表現の配慮
- 避ける:「診療不要で治る」「重篤疾患が完治」。
- OKの書き方:セルフメディケーション範囲で日常ケアの文脈に留め、受診勧奨を阻害しない。
習慣性・依存性の注意
- 避ける:該当品目で習慣性への言及なし。
- OKの書き方:習慣性の注意を明確に付記。媒体制約があれば遷移先で確実に読ませる。
使用・取扱い上の注意
- 避ける:極小文字、瞬間表示、背景と同化する色。
- OKの書き方:要点は本文で、詳細は遷移先でも実質的に読める形を確保(スマホ前提で検証)。
比較表示と他社誹謗
- 避ける:「最も安全」「他社は危険」など相対的貶め。
- OKの書き方:同条件・同指標で比較。統計的不確かさも添えて誤認を防止。僅差は断定しない。
医師等の推薦・保証の示唆
- 避ける:「医師推奨」「病院が保証」。肩書での権威付け。
- OKの書き方:製品固有の客観データで語る。監修表記は推奨・保証と誤読されない文脈に限定。
懸賞・賞品等による誘引
- 避ける:景品価値で安易な使用を煽る設計。
- OKの書き方:教育的・啓発的な設計へ。参加条件が使用判断に不当な影響を与えないよう設計。
不安・不快の過度な喚起
- 避ける:恐怖映像、極端なビフォーアフター、脅し文句。
- OKの書き方:リスクは事実ベースで冷静に提示。対処行動へつながる文脈に。
迷惑となる方法(スパム等)
- 避ける:同意のない大量配信、広告識別の欠落、未成年への不適切接触。
- OKの書き方:配信前同意/広告明示/容易な配信停止の三点セットを徹底。
本来用途からの逸脱強調の禁止
- 避ける:医薬品を食品・化粧品的に、医療機器を美容器具的に見せる演出。
- OKの書き方:用途・対象・使用シーンを本来の位置に固定して説明。
作り方の順序(現場での進め方)
- 承認情報の棚卸し:効能・用法用量・対象者・注意事項を1枚に集約。
- 骨子設計:「事実 → 意味 → 行動」で構成。最初に保証語・最大級語を排除。
- 演出は最後:体験談・擬似図・アニメは誤認トリガー。必要最小限に。
- 比較は再現可能性:指標・条件・サンプル数を簡潔に添える。
- 見え方テスト:実機で注意事項の可読性、スクロール、読み上げ可否を確認。
コピー前の最終チェック(テキスト用)
- 承認名(一般名)の明示はあるか。愛称だけになっていないか。
- 効能・性能が承認語の外側へ一歩も出ていないか(暗示・図解含む)。
- 「副作用なし/完全に治る/世界最高」等の保証・最大級が紛れていないか。
- 比較は同条件・同指標か。僅差を断定していないか。
- 医療用資材が一般に可視化されていないか(検索流出・直リンク対策)。
- 注意事項は実際に読めるサイズと導線か(PC/スマホ両方)。
- 景品設計が過剰誘引になっていないか。
- 第三者の肩書に依存した推薦・保証の示唆が残っていないか。
裏取りと記録(監査・差し戻しに強くする)
- エビデンス台帳:主張文(センテンス単位)⇔一次根拠を1対1で紐付け。
- 根拠の範囲:承認書・添付文書・PMDA資料・届出書・学会ガイドライン・原著論文など。該当ページ/図表番号まで明記。
- 保存ルール:
製品名_主張ラベル_根拠種別_年版.pdf。Web素材は日時・URL入りスクリーンショット。版管理で差分を残す。 - 記録項目:審査者/監修者/日付/最終版URL/差し戻し理由と是正内容。
参考
- 厚生労働省「医薬品等適正広告基準(本文・解説)」
- 薬機法 第66条(誇大広告・推薦等)