未管理著作物裁定制度:2026年スタート!企業が知っておくべき新著作権制度
2026年度から施行予定の「未管理著作物裁定制度」は、権利者が不明または連絡が取れない「眠れる著作物」を、文化庁長官の裁定と補償金支払いによって最大3年間利用可能にする新制度です。対象となるのは、集中管理されておらず、権利者の利用許諾方針が公表されていない公表著作物です。本記事では、制度の概要と目的、対象著作物の要件、申請から許諾までのプロセス、事前調査義務、補償金の仕組み、そして企業のマーケティング活動における具体的な活用シーンを解説します。
インターネット上には膨大な量の創作物が存在していますが、その中には権利者が不明または連絡が取れないために活用できない「眠れる著作物」が数多く存在します。これらの作品は、商業的・文化的価値があるにもかかわらず、権利処理の難しさから利用されないまま埋もれてしまっています。
そこで注目すべきなのが、2023年の著作権法改正によって誕生した「未管理著作物裁定制度」です。この制度は2026年度から施行される予定で、企業のマーケティング活動や創作活動に新たな可能性をもたらすことが期待されています。
未管理著作物裁定制度とは?
制度の概要と目的
未管理著作物裁定制度とは、著作権者から許諾を得られない著作物を一定の条件下で利用できるようにする新しい制度です。具体的には、集中管理(JASRACなどの管理事業者による一括管理)されておらず、利用の可否に関する権利者の意思が明確でない著作物について、文化庁長官の裁定(許可)を受けて補償金を支払うことで、最大3年間の時限的な利用を認める仕組みです。
この制度の主な目的は以下の2点です:
- 「眠っている著作物」の活用を促進すること
- 権利者への適切な対価還元を実現すること
海外では「孤児著作物(Orphan Works)」と呼ばれるこれらの作品を活用するための制度は各国で検討されてきましたが、日本版の制度はより実用的で柔軟な設計となっています。
法改正の経緯と施行時期
この制度は、令和5年(2023年)に成立した著作権法改正(令和5年法律第33号)によって創設されました。改正法では、著作権法第67条の3に未管理著作物裁定制度の規定が新設されています。
公布日は2023年5月26日で、未管理著作物裁定制度に関する規定は公布から3年以内に施行すると定められました。文化庁の発表によれば、2026年度中に制度が開始される予定です。
どんな著作物が対象?明確な線引きを理解する
未管理著作物裁定制度の対象となる著作物(法律上は「未管理公表著作物等」と定義)は、以下の要件を全て満たすものです:
- 公表された著作物であること:すでに世の中に公表・提供されている作品が対象となります。
- 権利が集中管理されていないこと:JASRAC等の著作権等管理事業者による管理下にある作品は対象外です。
- 権利者の利用許諾方針が公表されていないこと:権利者等がその作品の利用について問い合わせ先や利用条件を公に示していない場合に限られます。
- 著作者が利用を望んでいない明確な意思表示がないこと:著作者が作品の利用を積極的に禁止・回収しようとしているケースも除外されます。
つまり、「権利者による管理や意思表示がなく、利用許諾の可否が確認できないまま公開されている作品」が本制度の対象です。例えば、昔の写真・映像・書籍・イラストなどで、権利者と連絡が取れないものが典型例として挙げられます。
利用の流れ:申請から許諾までのプロセス
未管理著作物裁定制度を利用するための基本的な流れは以下のとおりです:
1. 事前調査と連絡試み
利用したい著作物について、まず権利者の所在や利用ルールを調査します。作品に許諾に関する記載がないか確認し、判明している連絡先があればメールやメッセージ等で問い合わせます。一定期間(14日間程度)待っても権利者から応答が得られない場合や、連絡先自体が不明な場合に次のステップに進みます。
2. 登録確認機関への申請
裁定申請は「登録確認機関」という窓口機関に対して行います。申請書類には利用したい著作物の情報、利用の目的・方法、そして事前に行った権利者確認の措置の内容を記載します。
3. 要件確認と補償金算定
登録確認機関は、その著作物が制度の対象要件に該当するか、事前措置が十分とられているかを審査します。同時に、著作物の種類や利用内容に応じて適正な使用料相当額(補償金額)を算出します。
4. 文化庁長官による裁定
登録確認機関の確認結果を踏まえて、文化庁長官が最終的な裁定を行います。ここで利用許諾期間(最大3年以内)と支払うべき補償金額が決定されます。裁定が下りると、その裁定の事実と著作物の情報が公表されます。
5. 補償金の支払いと利用開始
利用希望者(申請者)は決定した補償金を指定補償金管理機関に支払います。支払いが確認されると、著作物の利用開始が許可されます。以後、裁定で認められた範囲(利用方法・期間)内であれば、その著作物を利用することができます。
事前調査の重要性:権利者探しはどこまで必要?
制度を利用する前提として、申請者は事前に権利者の意思確認のための「相当な努力」を行う義務があります。これは権利者保護とのバランスを取るための重要な要件です。
具体的には以下のような調査・確認行為が求められます:
- 連絡可能な手段への問い合わせ:作者の連絡先が分かっている場合は、そこへ利用許諾の問い合わせを行う
- インターネット上での情報探索:検索エンジンやデータベースを用いて権利者情報を調べる
- 公開の呼びかけ:連絡先が全く不明な場合、インターネット上に権利者を探す旨の告知を出す
- 関係者への問い合わせ:出版社・レコード会社・制作会社など関係者が存在する場合に照会する
これらの調査を行った記録をきちんと残しておくことが、申請時にスムーズに要件を満たしていると示すためには重要です。
補償金の仕組み:適正な対価と供託の代替手段
補償金とは、裁定によって著作物を利用する対価としてユーザーが支払う金銭で、「通常の利用料の額に相当する額」を基準として決定されます。つまり、もし権利者から直接許諾を得ていたら支払っていただろう適正な使用料を想定して、その金額をユーザーは負担します。
従来の裁定制度では法務局に金銭を供託する必要がありましたが、新制度では「指定補償金管理機関」への支払いをもって供託に代えることが可能となります。これにより手続きが簡素化され、権利者への対価還元も確実になります。
将来、権利者が名乗り出た際は所定の手続きを経て補償金を受け取れる仕組みであり、権利者への未払いリスクを解消しています。
企業におけるビジネス活用シーン:マーケティングの新たな可能性
この新制度は、企業活動においても様々な活用シーンが考えられます。具体的には:
1. 過去の写真・映像の再利用
企業の歴史紹介や地域の昔の風景を紹介する広報コンテンツで、古い写真や映像を使いたい場合に活用できます。例えば、昭和期の街並み写真を地域PR動画に組み込む際、裁定を受けて補償金を支払えば3年間その動画を配信できます。
2. ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用
SNSやブログ上の一般ユーザーの作品で、連絡先が不明なものを広告等に使いたいケースにも対応できます。個人が昔アップしたイラストを電子書籍の表紙に利用するといった使い方も可能になります。
3. 絶版本・旧作コンテンツの復刻
出版社や映像制作会社にとって、古い作品を