ファネルの「穴」を塞ぐリードナーチャリングの教科書。BtoBマーケティングでMOFU(中間層)が最重要な理由 – ファネルAi
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ファネルの「穴」を塞ぐリードナーチャリングの教科書。BtoBマーケティングでMOFU(中間層)が最重要な理由

「展示会で集めた名刺の束が、机の引き出しで眠っている」「資料請求は来るのに、インサイドセールスが電話すると『ただの情報収集です』と断られる」「マーケティング部が渡したリードを、営業部が『質が悪い』と放置してしまう」——もしあなたの会社でこのような現象が起きているなら、それはマーケティングファネルの設計において、最も重要なパーツが抜け落ちている証拠かもしれません。

そのパーツこそが、「リードナーチャリング(顧客育成)」です。

マーケティングファネル(Funnel)とは、広く集客した見込み客が検討段階を経て徐々に絞り込まれ、成約に至るまでのプロセスを図式化したものです。多くの企業は、ファネルの入り口である「集客(TOFU)」と、出口である「商談・成約(BOFU)」には多大なリソースを割いています。しかし、その間をつなぐ「中間層(MOFU)」の育成プロセスがおろそかになっているケースが後を絶ちません。

本記事では、ファネル機能不全の主犯である「MOFUの欠落」に焦点を当て、BtoBマーケティングにおいてなぜ今リードナーチャリングが不可欠なのか、そして具体的にどう実践すればよいのかを、体系的に解説していきます。


この記事の要点

1. 集めたリードのうち「今すぐ客」はわずか数%〜10%程度であり、残り90%の「そのうち客」を育成するリードナーチャリングなしには、ファネルは機能しない。

2. MOFU(中間層)で求められるのは「売り込み」ではなく「信頼の構築」と「教育」であり、顧客にとって価値ある情報を継続的に提供することが本質である。

3. リードナーチャリングは短期で成果が出るものではなく、コンテンツという「資産」を積み上げながら長期的に取り組む農耕型マーケティングである。


なぜ、ファネルの「中間」が重要なのか

かつての営業スタイル、いわゆる「足で稼ぐ営業」が主流だった時代、ファネルの構造はシンプルでした。集めた名刺に対して営業マンが片っ端からアプローチし、その場で見込みの有無を判断していたからです。育成の役割も、営業マン個人の対話スキルに委ねられていました。

しかし、現代のBtoB購買プロセスは劇的に変化しています。デジタル化によって顧客は自ら情報を収集できるようになり、営業担当者に会う前にすでに購買プロセスの大半を終えているのが現実です。さらに、SaaSなどのサブスクリプションモデルの台頭や、意思決定に関与する人数の増加により、検討期間は長期化の一途をたどっています。

「今すぐ客」は全体のわずか数%という現実

ここで衝撃的な事実をお伝えしなければなりません。あなたが必死に集めたリードの中で、すぐに製品の導入を検討してくれる「今すぐ客」は、一般的に全体のわずか数%から10%程度に過ぎないと言われています。

残りの90%は、「課題はあるが緊急ではない」「情報収集段階」「予算化は来期以降」といった「そのうち客」です。もしリードナーチャリングの仕組みを持っていなければ、この90%の潜在顧客をすべて競合他社に明け渡すことになります。なぜなら、顧客が検討を本格化させたタイミングで、あなたの会社の存在が頭になければ、選択肢にも上がらないからです。

ファネルの形状を維持し、集めた水を漏らすことなく成約へと導くためには、この「そのうち客」を長期間にわたって繋ぎ止め、適切なタイミングで引き上げるMOFU(Middle of Funnel)の施策、すなわちリードナーチャリングが不可欠なのです。


MOFU(中間層)における顧客心理の解像度を上げる

リードナーチャリングを成功させるためには、ファネルの中間層にいる顧客がどのような心理状態にあるのかを深く理解する必要があります。TOFU(認知)段階を過ぎた顧客は、すでに自社の課題に気づいています。しかし、解決策を一つに絞り込むには至っていません。彼らの頭の中は、不安と迷いでいっぱいなのです。

「システムを導入したいが、失敗して社内の評価を下げたくない」「A社の機能は魅力的だが、B社の価格も捨てがたい」「上司を説得するための確実な根拠が欲しい」——こうした心理を抱えている顧客に対して、一方的に「ウチの商品を買ってください」とアピールするのは逆効果です。

MOFU段階で求められるのは「売り込み」ではなく「信頼の構築」

この段階で求められるコミュニケーションは、「売り込み」ではなく「信頼の構築」と「教育(啓蒙)」です。顧客は、自分たちの課題に対して専門的な知見を持ち、中立的な立場でアドバイスをくれるパートナーを探しています。

したがって、このフェーズでのコンテンツは、自社製品の宣伝ではなく、顧客の業務課題を解決するためのノウハウや、他社の成功事例、失敗しない選定基準といった、顧客にとって価値のある情報でなければなりません。「この会社からのメールは勉強になる」「困ったときはこの会社のサイトを見れば答えがある」という信頼残高(ラポール)を積み上げていく作業こそが、リードナーチャリングの本質です。

この信頼の土台があって初めて、いざ検討が本格化した際に「相談するなら、ずっと情報をくれていたあの会社にしよう」という第一想起(トップオブマインド)を獲得できるのです。


ファネル各段階の特徴とリードナーチャリングの位置づけ

リードナーチャリングがファネル全体の中でどのような役割を果たすのか、改めて整理しておきましょう。以下の表で、TOFU・MOFU・BOFUそれぞれの特徴と、ナーチャリングとの関係性を比較します。

段階顧客の状態主な目的ナーチャリングとの関係
TOFU(認知層)課題に気づいていない、または漠然とした不安を抱えている認知獲得・リード情報の取得ナーチャリング対象を「集める」段階
MOFU(中間層)課題を認識し、解決策を探し始めているリードナーチャリング(育成)ナーチャリングの「中心」となる段階
BOFU(検討層)具体的な製品選定に入り、最終判断を下そうとしている商談化・成約ナーチャリングの「出口」となる段階

この表からわかるように、リードナーチャリングはMOFUを中心としながらも、TOFUで集めたリードを受け取り、BOFUへと送り出すという「橋渡し」の機能を担っています。この橋がなければ、いくらTOFUで大量のリードを集めても、BOFUの商談には繋がらないのです。


リードナーチャリングの実践プロセス

では、具体的にどのようにファネルの中間層を厚くしていけばよいのでしょうか。リードナーチャリングは、ただ闘雲にメールマガジンを送ることではありません。戦略的な設計が必要です。ここでは、そのプロセスを3つのステップに分けて解説します。

ステップ1:顧客データの統合とセグメンテーション

まず行うべきは、顧客情報の整理です。展示会で交換した名刺、WEBサイトからの資料請求、過去に失注した案件など、社内に散らばっているリード情報を一元管理します。ここで役立つのがMA(マーケティングオートメーション)ツールですが、ツールがなくてもExcelなどで管理することは十分可能です。

重要なのは、すべての顧客に同じ情報を送らないということです。業種、職種、企業規模、そして検討段階(ファネルのどの位置にいるか)によって、顧客をセグメント分けします。たとえば、「製造業」の「部長クラス」で「過去に料金ページを閲覧した人」と、「IT企業」の「担当者」で「入門用コラムを読んだ人」では、響くメッセージが全く異なります。前者はROI(費用対効果)や導入事例に関心があるでしょうし、後者は基礎知識や業務効率化のノウハウを求めているはずです。このセグメンテーションの精度が、ナーチャリングの成果を左右します。

ステップ2:段階に応じたコンテンツのマッピング

次に、セグメント分けした顧客に対して、どのような情報を届けるかを設計します。これを「コンテンツマップ」の作成と呼びます。

まだ検討度が低い層には、業界のトレンド情報や、業務改善のチェックリストといった、読み物として面白いコンテンツを提供し、関係を維持します。これを「定期接触」と呼びます。一方で、WEBサイトの料金ページを何度も閲覧していたり、具体的な事例資料をダウンロードしたりといった、検討度が高まったシグナルを見せた顧客には、より踏み込んだ情報を提供します。他社製品との比較表、導入シミュレーション、個別相談会の案内などです。

このように、顧客の温度感に合わせて、階段を一段ずつ上ってもらうようなコンテンツを用意し、適切なタイミングで提供することが重要です。この「適切なタイミング」を見極めるために、多くのBtoB企業では、顧客の行動を点数化する「スコアリング」という手法を用います。メールを開封したら1点、セミナーに参加したら5点、といった具合です。

ステップ3:マルチチャネルでのコミュニケーション

リードナーチャリングの手段はメールだけではありません。メールはあくまできっかけ作りの一つです。たとえば、メールでセミナー(ウェビナー)を案内し、そこで講師の熱量に触れてもらうことも強力なナーチャリングになります。また、特定の資料をダウンロードした顧客に対して、インサイドセールス(内勤営業)が電話をかけ、「資料で不明点はございませんでしたか?」とフォローを入れるのも効果的です。

さらに最近では、リターゲティング広告を活用して、一度サイトを訪れた顧客に有益な記事広告を表示させたり、FacebookやLinkedInなどのSNSで接点を持ったりと、手法は多様化しています。オンラインとオフライン、デジタルとアナログを組み合わせ、顧客が普段情報収集しているチャネルに自然な形で入り込むことが求められます。


検討段階別のナーチャリング手法を比較する

リードナーチャリングの手法は多岐にわたりますが、顧客の検討段階によって効果的な手法は異なります。以下の表で、段階別に有効なナーチャリング手法を整理しました。

検討段階有効なナーチャリング手法目的頻度の目安
初期(課題認識直後)メールマガジン、ブログ記事、業界レポート関係維持・教育週1〜月2回程度
中期(解決策探索中)事例資料、ウェビナー、比較ガイド信頼構築・自社優位性の訴求行動トリガーに応じて
後期(選定段階)個別相談、デモ、インサイドセールスからの架電商談化への誘導即時対応

この表のポイントは、検討段階が進むにつれて、コミュニケーションの「個別性」と「即時性」が高まるということです。初期段階では一斉配信のメールで十分ですが、後期段階では顧客一人ひとりに合わせた対応が求められます。


インサイドセールスとの連携がファネルを機能させる

マーケティングファネルを機能させる上で、忘れてはならないのが「インサイドセールス」の存在です。どれだけ優れたメールを送り、どれだけ有益なホワイトペーパーを提供しても、最終的に顧客の背中を押すのは「人」の言葉であることが多いからです。

マーケティング部門がナーチャリングを行い、スコアが高まった「ホットリード」を検出したとしても、それを営業部門に丸投げしてはいけません。多くの場合、フィールドセールス(外勤営業)は忙しく、確度が100%に見えない案件は後回しにしがちだからです。

マーケティングと営業の「橋渡し役」としてのインサイドセールス

ここでインサイドセールスが、マーケティングと営業の「橋渡し役」として機能します。MAツールで検知したホットな兆候(たとえば、久しぶりにサイトを訪れた、など)をもとに、インサイドセールスが電話やメールでタイムリーにアプローチを行い、現状の課題感や検討状況(BANT条件)をヒアリングします。そこで確実な商談ニーズがあると判断されたものだけをフィールドセールスにトスアップする。この連携プレーが確立されて初めて、ファネルはスムーズに流れ始めます。

インサイドセールスによるヒアリング情報は、マーケティング側にもフィードバックされるべきです。「この記事を読んで問い合わせた人は、実はこういう課題を持っていた」という生の声は、次のコンテンツ制作やナーチャリングシナリオの改善における貴重な資源となります。ファネルは一方通行ではなく、循環型のサイクルとして捉えるべきなのです。


私がリードナーチャリングの重要性を痛感した瞬間

ここで少し、私自身の経験をお話しさせてください。以前、あるBtoB企業のマーケティング支援に携わった際、まさに「ファネルの穴」を目の当たりにしました。

その企業は、展示会やウェビナーを積極的に開催し、年間で数千件ものリードを獲得していました。しかし、そこから商談に至るのは全体の1%にも満たない状況でした。経営陣は「もっと集客を増やせ」と指示を出していましたが、私はそれに違和感を覚えました。

実態を調査してみると、驚くべきことがわかりました。獲得したリードに対して行われていたのは、月1回の製品紹介メールの一斉配信のみ。しかもその内容は、毎回ほぼ同じ「○○(製品名)の新機能のご紹介」という自社都合のものでした。顧客の検討段階も、業種も、まったく考慮されていなかったのです。

そこで私たちは、まずリードを検討段階別に分類し直すところから始めました。過去の行動履歴(どの資料をダウンロードしたか、どのページを閲覧したか)を分析し、検討度の高い層、中程度の層、まだ情報収集段階の層に分けました。そして、それぞれに異なるコンテンツを配信するシナリオを設計したのです。

検討度の低い層には業界トレンドの読み物を、中程度の層には導入事例を、検討度の高い層には比較資料と個別相談の案内を。さらに、料金ページを複数回閲覧した人には、インサイドセールスから翌日に電話を入れるルールを設けました。

結果として、リードから商談への転換率は6ヶ月で約3倍に改善しました。集客数を増やしたわけではありません。すでに持っていたリードとの関係性を丁寧に育てることで、成果が劇的に変わったのです。この経験から、私は「ファネルの穴を塞ぐ」ことの重要性を身をもって学びました。


長期戦を覚悟し、資産を積み上げる

リードナーチャリングに取り組む際、多くの企業が陥る罠があります。それは「すぐに成果を求めてしまう」ことです。

冒頭でも述べた通り、BtoBの検討期間は長期化しています。半年、1年、場合によっては2年以上の付き合いを経て、ようやく成約に至るケースも珍しくありません。メールを3回送って反応がないからといって、「このリードは死んでいる」と判断して削除してしまうのは、非常にもったいないことです。

リードナーチャリングは「農耕型」のマーケティング

リードナーチャリングは、農耕型のマーケティングです。種をまき、水をやり、雑草を抜き、長い時間をかけて収穫を目指す活動です。今日まいた種が明日実ることはありませんが、丁寧に育て続ければ、来年、再来年に大きな収穫をもたらしてくれます。

また、作成したコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、事例集、セミナー動画)は、一度使って終わりではありません。これらは企業の「資産(アセット)」として蓄積されます。良質なコンテンツが蓄積されればされるほど、自動的に顧客を教育し、引き上げてくれる仕組みが強固になります。最初は手間がかかるように感じるかもしれませんが、一度仕組みが回り始めれば、労働集約的な営業活動から脱却し、効率的に売上を生み出し続ける強力なエンジンとなるのです。


よくある質問(FAQ)

リードナーチャリングとリードジェネレーションの違いは何ですか?

リードジェネレーションは「リードを獲得する」活動であり、展示会出展やWeb広告、コンテンツマーケティングによる集客がこれに該当します。一方、リードナーチャリングは「獲得したリードを育成する」活動です。両者はファネルの異なる段階を担っており、どちらが欠けてもファネルは機能しません。

MAツールがないとリードナーチャリングはできませんか?

MAツールがなくても、リードナーチャリングは実践可能です。ExcelやGoogleスプレッドシートでリストを管理し、メール配信ツールを使ってセグメント別に配信することで、基本的なナーチャリングは十分に行えます。MAツールは効率化と高度化のための手段であり、必須ではありません。

どのくらいの頻度でリードに接触すべきですか?

一概には言えませんが、検討度の低いリードには月1〜2回程度の定期接触が目安です。頻度が高すぎると「しつこい」と感じられ、低すぎると忘れられてしまいます。重要なのは頻度よりも「価値ある情報を届けているか」です。顧客にとって有益なコンテンツであれば、接触頻度が多少高くても歓迎されます。

ナーチャリングの効果はどのように測定すればよいですか?

主要なKPIとしては、メールの開封率・クリック率、コンテンツのダウンロード数、セミナー参加率、そして最終的な商談化率・成約率があります。特に重要なのは「MQL(Marketing Qualified Lead)からSQL(Sales Qualified Lead)への転換率」です。この数値が向上していれば、ナーチャリングは機能しています。

ナーチャリング用のコンテンツはどのくらい必要ですか?

最低限必要なのは、検討段階別に3〜5本程度のコンテンツです。ただし、コンテンツは「数」よりも「質」と「ターゲットとの適合性」が重要です。まずは自社のターゲット顧客が抱える典型的な課題を洗い出し、それに応えるコンテンツから作成していくことをおすすめします。


まとめ:ファネルの「詰まり」を解消し、企業の成長エンジンへ

「ファネル」という言葉を聞くと、逆三角形の図形を思い浮かべ、上から下へと自然に顧客が落ちてくるようなイメージを持つかもしれません。しかし実際には、重力に逆らって顧客を引き上げ、背中を押し続ける努力が必要です。その努力の総称がリードナーチャリングです。

もし今、あなたの会社のマーケティングファネルが機能していないと感じるなら、それは集客(TOFU)が足りないのではなく、集めたあとの育成(MOFU)が不足している可能性が高いでしょう。穴の開いたバケツに水を注ぎ続けるのをやめ、まずはバケツの穴を塞ぐこと、つまり今あるリードとの関係性を深めることから始めてみてはいかがでしょうか。

顧客の課題に寄り添い、有益な情報を提供し続ける姿勢は、必ず信頼という形で返ってきます。そしてその信頼こそが、競争の激しいBtoB市場において、貴社が選ばれ続けるための最大の競争優位性となるはずです。

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