【実証実験】Claude CoworkでSalesforce/HubSpotへの日報入力を自動化してみた——全営業マンの悲願がついに実現
結論: Claude Coworkを使えば、雑な商談メモからSalesforce/HubSpotへの日報入力を自動化できます。ドロップダウン選択やカレンダー入力にも対応し、さらに「雑なメモを上司に見せられるレベルの文章に清書」しながら入力してくれます。
要点1: 従来のAPI連携と違い、「人間と同じように画面を見てクリックする」方式のため、システム部門への依頼不要。現場レベルで導入可能です。
要点2: ただし二要素認証(MFA)やスクロールが必要な画面には課題あり。まずは「入力して画面を開いておく→人間が確認して保存」というステップからの導入がおすすめです。
営業パーソンの皆様、今日もお疲れ様です。商談を終えて、直帰したい気持ちを抑えながらカフェやオフィスに戻り、PCを開く。そして始まるのが、SalesforceやHubSpotへの「日報入力」という名の苦行です。
「商談は楽しかったのに、この入力作業だけでエネルギーが削がれる」「項目が多すぎて、つい『特になし』と書いてしまい上司に怒られる」——こんな経験、誰もが一度はあるのではないでしょうか。
そんな日常が、ついに終わるかもしれません。API連携も、複雑なPythonコードも必要ありません。Anthropic社のAI「Claude」の最新エージェント機能「Cowork」を使えば、AIが勝手にブラウザを立ち上げ、ログインし、あなたの代わりにキーボードを叩いて保存ボタンを押すことが可能になったのです。
今回は、全営業マンの悲願である「SFA入力の完全自動化」を目指し、Claude CoworkにSalesforce/HubSpotを操作させた実証実験レポートをお届けします。
なぜ「API連携」ではなく「Claude Cowork」なのか
これまでも「AIで日報を自動化」という話はありました。しかし、それらは大抵「API連携」を前提としていました。SalesforceのAPIを叩いて、HubSpotのWebhookを設定して、というアプローチです。
従来のAPI連携の限界
API連携による自動化には、いくつかの高い壁がありました。まず、システム部門への依頼が必須です。営業担当者が「日報入力を自動化したい」と思っても、エンジニアに開発を依頼し、数週間〜数ヶ月の開発期間を経て、ようやく実現します。開発費も数十万円〜数百万円かかることが珍しくありません。
さらに厄介なのは、項目の変更があるたびに改修が必要になることです。「商談フェーズに『PoC実施中』を追加したい」という些細な変更でも、API連携の改修が必要になります。「ドロップダウンリストのIDを指定する」「カスタムフィールドのAPIキーを取得する」といった作業は、現場の営業マンにはハードルが高すぎます。
Claude Coworkの革命——「画面を見て操作する」AI
Claude Coworkのアプローチはまったく異なります。このAIは、人間と同じように画面を見ます。「新規商談」ボタンをクリックして、と言えば、画面上のボタンの場所を探してクリックする。ドロップダウンリストを開いて、選択肢の中から「Evaluation」を見つけて選ぶ。
つまり、「派遣スタッフさんに隣でPC操作を頼む」のとまったく同じ感覚で自動化できるのです。APIのIDもエンドポイントも知る必要はありません。「この画面のここに、これを入力して」と伝えるだけ。これが最大の革命です。
従来の自動化手法との比較
Claude Coworkがどれだけ革新的かを理解するために、従来の自動化手法と比較してみましょう。
| 比較項目 | API連携 | 従来のRPA | Claude Cowork |
|---|---|---|---|
| 開発の必要性 | エンジニア必須 | シナリオ設計必須 | 自然言語で指示するだけ |
| 導入コスト | 数十万円〜 | 月額数万円〜 | API利用料のみ |
| UI変更への対応 | 改修必要 | シナリオ修正必要 | AIが自動で適応 |
| ドロップダウン対応 | APIキー指定が必要 | ID指定が必要 | 視覚的に選択可能 |
| 文章の清書 | 別途AI連携が必要 | 不可 | 入力と同時に実行 |
| 導入ハードル | 高い | 中程度 | 低い |
| 現場主導での導入 | 困難 | 困難 | 可能 |
特に注目すべきは「UI変更への対応」です。従来のRPAは、ボタンの位置やHTMLのIDを指定してシナリオを組みます。そのため、SalesforceやHubSpotのUIが少しでも変わると、シナリオが動かなくなり、保守作業が発生します。
一方、Claude Coworkは「新規ボタン」という文字を探して押しに行きます。ボタンの位置が多少変わっても、AIは画面上で「新規」という文字列を探し、そこをクリックする。この「自己修復的な柔軟性」が、現場での運用を圧倒的に楽にします。
実証実験:商談メモを渡してSalesforceに入力させる
では、実際にやってみましょう。今回のミッションは、「テキストの商談メモを元に、Salesforceに新規商談レコードを作成し、フェーズを更新する」ことです。
Step 1:入力元データの準備——雑なメモでOK
営業マンは移動中にスマホで以下のような雑なメモを残したとします。これをデスクトップの「today_memo.txt」に保存します。
「【商談メモ】相手:株式会社テック・イノベーション 佐藤部長。日時:10/24 14:00。内容:新プラン『Alpha』に興味あり。特にセキュリティ機能に食いついていた。予算感:月額50万くらいなら稟議通せそうとのこと。次のアクション:来週火曜までに詳細見積もりを送る。確度:B(来月クロージング狙える)」
ポイントは、この「雑さ」です。移動中にスマホでさっとメモした程度のクオリティ。これを、上司に提出できるレベルの日報に仕上げてもらいます。
Step 2:悪魔的プロンプトの投入
Claude Cowork環境を立ち上げ、Chrome拡張機能「Claude in Chrome」と連携させた状態で、以下のような指示を出します。
「あなたは私の営業アシスタントです。デスクトップの『today_memo.txt』を読み込み、以下の手順でSalesforceに入力してください。まず、Google Chromeを開き、Salesforceのブックマークをクリックしてください(ログイン済みセッションを使用)。次に、『商談』タブを開き、『新規』ボタンをクリックしてください。そして、メモの内容を元に、商談名は『テック・イノベーション様 新プラン提案』とし、フェーズはメモの確度から判断して適切なものを選択してください。金額はメモの予算感を入力し、Next Stepはメモの『次のアクション』を入力してください。説明欄には、メモの『内容』を報告書として適切な丁寧なビジネス文書(『だ・である』調)にリライトして入力してください。最後に『保存』をクリックして終了してください。」
Step 3:デモ実行——画面の中で起きる「魔法」
コマンドを実行すると、私の手は膝の上にあるのに、画面が勝手に動き出しました。
まず、Chromeが起動してSalesforceのトップ画面が表示されます。次に、AIが画面上の「新規」ボタンを探し始めます。マウスカーソルが少し迷った後、正確にボタンをクリック。ポップアップウィンドウが開きます。
ここからが凄いのですが、「フェーズ」のプルダウンをクリックし、リストの中から「Evaluation」を見つけて選択しました。HTML構造を解析しているのではなく、視覚的にリストを見て選んでいる動きです。人間がやるのとまったく同じ操作感。
そして最も感動したのが、文章の生成と入力です。雑なメモだった「食いついていた」という表現が、説明欄には「特にセキュリティ機能に対し、高い関心を示されておりました」と、美しく変換されて入力されていきます。「来週火曜までに見積もり送る」は「10月29日(火)を期限として、詳細見積もりを送付予定である」に。この変換と入力が同時に行われるのです。
入力漏れがないかを確認するかのような「間」があり、最後に「保存」ボタンをクリック。「商談 “テック・イノベーション様 新プラン提案” を作成しました」というトースト通知が表示されました。
所要時間は約2分。私がコーヒーを一口飲んでいる間に、面倒な入力作業が完了しました。
私が実際に試して分かった「強み」と「壁」
実際にSalesforceやHubSpotを操作させてみて分かった、Claude Coworkのリアルな実力をお伝えします。
ここが最強——AIならではの強み
まず、ドロップダウンやカレンダー入力に対応できる点が素晴らしいです。従来の簡易的なRPAではエラーになりがちだった「カレンダーから日付を選ぶ」操作も、Claudeは「来週の火曜日」をカレンダー上で視認してクリックできます。「10月29日」と入力するのではなく、カレンダーUIを操作して日付を選ぶ。この違いは、実務では非常に大きいです。
次に、「文章作成」と「入力」の同時並行ができること。これがAIならではの強みです。単なる転記ではなく、「雑なメモを上司に提出できるレベルの日本語に清書」しながら入力してくれるため、日報の質が劇的に向上します。「食いついていた」が「高い関心を示されておりました」になる。この変換を人間がやろうとすると、入力とは別に「考える時間」が必要ですが、AIは同時にやってくれます。
そして、UI変更に強いという点も重要です。ボタンの位置が多少変わっても、AIは「新規ボタン」という文字を探して押しに行きます。SalesforceやHubSpotは頻繁にUIを更新しますが、Claude Coworkはその度にシナリオを修正する必要がありません。
ここが限界——現時点での課題
一方で、二要素認証(MFA)の壁は大きな課題です。ログイン時にスマホアプリでの承認などを求められると、そこで止まってしまいます。対策としては、「ログイン済みのブラウザプロファイル」を使うか、セッション時間を長く設定する工夫が必要です。
また、スクロールが必要な画面も苦手です。入力項目が多く、画面をスクロールしないと「保存」ボタンが見えない場合、AIがボタンを見つけられずに困惑することがありました。プロンプトで「下にスクロールして保存ボタンを探してください」と明示的に指示すれば解決しますが、事前に画面構造を把握しておく必要があります。
速度についても、人間がショートカットキーを駆使して爆速入力するよりは遅いです。マウスを動かしてクリックする動作が入るため、「丁寧な新人が操作している」くらいのスピード感です。ただし、裏で動かしておけばいいので、この「遅さ」は実務上あまり問題になりません。
導入のロードマップ——明日からどう使う?
いきなり全社のSFA入力をAI化するのはリスクがあります。まずは個人レベル、あるいはチーム単位での「裏技」として導入をおすすめします。
Phase 1:「下書き」までの代行
いきなり「保存」までさせず、「入力画面を開いて、項目を埋めた状態」で待機させるプロンプトにします。人間は画面を見て、内容に間違いがないかを確認し、最後に自分で「保存」を押すだけ。
これだけでも、入力の手間は9割削減されます。キーボードを叩く時間がほぼゼロになり、「確認して承認する」だけの作業に変わります。ミスのリスクも、人間の目で最終確認することで最小化できます。
Phase 2:入力項目の標準化
AIに入力させるために、商談メモ(入力元)のフォーマットを少し整えます。「誰と」「いくらで」「次はどうする」の3点を必ずメモに残すルールにするだけで、AIの精度は飛躍的に高まります。
具体的には、チームで「商談メモテンプレート」を作成し、最低限の項目を定義します。「顧客名」「商談日時」「金額感」「次のアクション」「確度」の5項目が揃っていれば、Claude Coworkはほぼ完璧に入力できます。
Phase 3:完全自動化(バックグラウンド処理)
信頼性が確認できたら、帰社前にスマホからメモを所定のフォルダ(Dropbox等)に放り込む運用にします。オフィスのPCで待機しているClaudeがそれを検知し、あなたが移動している間にSFAへの入力を済ませておく。
オフィスに着いたら、日報は既に書き終わっています。あなたがやることは、内容を確認して「承認」ボタンを押すだけ。これが「AI時代の営業日報」の姿です。
よくある質問(FAQ)
Q1. うちの会社のSalesforce/HubSpotは項目が多くて特殊なんですが、対応できますか?
項目数が多い場合でも、プロンプトで各項目の入力ルールを明確に指定すれば対応可能です。ただし、画面スクロールが必要な場合は「下にスクロールして次の項目を探してください」という指示を追加する必要があります。カスタムフィールドも、画面上のラベル名で指定すれば入力できます。
Q2. 二要素認証(MFA)が設定されていますが、使えますか?
現時点では、MFAが設定されていると自動ログインで止まってしまいます。対策としては、ログイン済みのブラウザセッションを維持しておく方法が有効です。セッションの有効期限を長く設定するか、作業前に手動でログインしておく運用が現実的です。
Q3. 入力ミスが心配です。本当に任せて大丈夫ですか?
最初から「保存まで完全自動」にするのではなく、「入力画面を開いて項目を埋めた状態で待機」させることをおすすめします。人間が内容を確認してから保存ボタンを押す運用であれば、ミスのリスクを最小限に抑えられます。信頼性が確認できてから、段階的に自動化範囲を広げていくのが安全です。
Q4. HubSpotでも同じことができますか?
はい。Claude Coworkは特定のSFAに依存しておらず、「画面を見て操作する」方式のため、HubSpotでも同様に使えます。むしろ、HubSpotの方がUIがシンプルな分、スムーズに動作する印象があります。画面上のボタンやフィールドのラベル名を指定すれば、AIがそれを探して入力します。
Q5. セキュリティ上の懸念はありませんか?
Claude Coworkはローカル環境で動作するため、データをクラウドにアップロードする従来のAIチャットよりは安心です。ただし、「プロンプトインジェクション」のリスク(悪意ある指示が埋め込まれたページをAIが読み込んでしまうリスク)はゼロではありません。信頼できるサイト・サービスのみを対象にし、重要操作では人間の確認を挟む運用をおすすめします。
まとめ:営業は「入力」から解放され「思考」へ戻る
「SFAへの入力」は、経営管理上は重要です。データが蓄積されなければ、売上予測も立てられないし、営業プロセスの改善もできません。しかし、営業担当者個人にとっては「一銭も生まない時間」であることも事実です。
この時間を、Claude Coworkという新しいパートナーに丸投げできる意義は計り知れません。雑なメモが、美しい報告書に変わり、正確にデータベースに格納される。この快感を一度味わえば、もう二度と手入力には戻れないでしょう。
営業日報は、人間が書く時代から、「AIが書き、人間が承認する」時代へとシフトしました。AIが得意な「大量のルーチン入力」は任せて、人間は「次の商談で何を話すか」「この顧客の本当の課題は何か」という思考に時間を使う。これが、AI時代の営業の姿だと私は考えています。
さあ、今夜からその「空いた時間」で、明日の戦略を練りませんか?移動中にスマホでさっとメモを残すだけで、帰社したときには日報が完成している。その未来は、もうすぐそこまで来ています。