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「The Model(ザ・モデル)」とは?根性論を捨てて「売れる仕組み」を科学的に作る方法

The Modelとは、営業プロセスを4つの専門チーム(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス)に分解し、それぞれをKPIで管理することで「売上の再現性」を作る仕組みです。 最大のメリットは、どこがボトルネックかを数値で特定し、精神論ではなくデータに基づいた改善ができること。ただし、各部門のKPIが分断されると「部分最適」に陥り、部門間の対立が生まれるリスクがあります。成功の鍵は、分業の「型」を真似ることではなく、「顧客中心」という哲学を組織全体にインストールすることです。

SaaSビジネスやBtoBマーケティングの世界に身を置いていると、避けて通れない言葉があります。それが「The Model(ザ・モデル)」です。

私がこの概念に初めて触れたのは、前職でマーケティング部門の立ち上げに関わっていたときでした。当時の営業組織は、いわゆる「一人完結型」。ベテラン営業マンがそれぞれのやり方で数字を作っており、「なぜAさんは売れてBさんは売れないのか」を誰も説明できない状態でした。

そんな中で出会ったThe Modelという考え方は、まさに目から鱗が落ちる体験でした。しかし同時に、この概念を「単なる分業制」だと誤解している企業がいかに多いかも、その後の仕事を通じて痛感することになります。

今回は、Salesforce社が確立し、現代の営業組織の「勝ちパターン」として定着したこのモデルについて、その本質と、導入時に陥りがちな落とし穴まで、できるだけ現場目線でお伝えしていきます。


なぜ従来の「一人完結型」営業には限界があるのか

かつての日本の営業スタイルを思い浮かべてみてください。一人の担当者がリスト作成からテレアポ、商談、クロージング、そして納品後のサポートまでを一貫して担う。いわゆる「属人型」の営業です。

この形態が長らく主流だったのには理由があります。顧客との関係性が一人の担当者に集約されるため、信頼関係が築きやすい。また、案件の全体像を把握しているため、柔軟な対応ができる。ベテラン営業マンが「背中で語る」姿は、ある種の美学として尊重されてきました。

しかし、このスタイルには致命的な弱点が存在します。

一つは、その人が辞めたら売上が止まるということ。優秀な営業マンが退職したとたんに業績が急落するという話は、決して珍しくありません。顧客との関係性も、商談のノウハウも、すべてその人の頭の中にしか存在しないからです。

もう一つ、より深刻な問題があります。それは「なぜ売れたのか(売れないのか)」がブラックボックス化してしまうことです。

「今月は未達でした」という報告を受けても、アポイントが取れなかったのか、商談がうまくいかなかったのか、そもそもターゲティングが間違っていたのか、原因を特定できません。結果として、「もっと頑張れ」「気合を入れろ」という精神論に頼らざるを得なくなります。


The Modelの基本構造——営業プロセスを4つの専門チームに分解する

The Modelでは、顧客が商品を知ってから契約を継続するまでの流れを、大きく4つのプロセスに分け、それぞれに専門チームを配置します。

駅伝のバトンパスをイメージしてください。顧客というバトンを、最適なタイミングで次の走者へと繋いでいく。それぞれの走者は自分の区間に特化することで、チーム全体としてのタイムを最大化する。これがThe Modelの基本的な考え方です。

マーケティング——見込み客を「集める」役割

マーケティングチームのミッションは、リード(見込み客)の獲得です。Web広告、展示会、ウェビナー、オウンドメディア、SNSなどを駆使して、自社製品に興味を持ってくれそうな層を集めます。

昔の営業が「電話帳の上から順番にかける」スタイルだったとすれば、現代のマーケティングは「興味がある人を探知する」役割を担います。闇雲にアプローチするのではなく、すでに何らかの関心を示している人を見つけ出し、次のプロセスへと引き渡すのです。

このチームが追うべき主要なKPIは、リード獲得数です。ただし、後述するように「数」だけを追うと別の問題が発生するため、リードの「質」も同時に意識する必要があります。

インサイドセールス——見込み客を「育てる」役割

インサイドセールスは、獲得したリードに対して電話やメール、オンライン会議ツールを使ってアプローチするチームです。このチームの最も重要な役割は、リードの「見極め」にあります。

ここでのポイントは、「無理に売らないこと」です。相手の課題をヒアリングし、「今すぐ買うべき客(ホットリード)」なのか、「まだ情報収集段階なのか」を判断します。確度の高い商談だけを次のフィールドセールスに渡す、いわば司令塔の役割を果たすのです。

まだ購入のタイミングではないリードに対しては、無理にアポイントを取ろうとせず、定期的な情報提供を通じて関係性を維持します。これが「リードナーチャリング(育成)」と呼ばれる活動です。

このチームのKPIは、商談獲得数(アポイント数)です。ただし、「とにかくアポを取ればいい」という姿勢は、後工程に悪影響を及ぼします。

フィールドセールス——商談を「まとめる」役割

フィールドセールスは、いわゆる「営業(外勤営業)」です。インサイドセールスからトスアップされた「確度の高い顧客」に対して、具体的な解決策を提案し、クロージングを行います。

このチームの強みは、テレアポや見込み客探しから解放されていることです。商談の質を高めることだけに集中できるため、一人あたりの生産性は従来型の営業と比較して大幅に向上します。

KPIは受注金額と受注率です。受注率が低い場合は、提案内容や商談の進め方に問題がある可能性があります。あるいは、インサイドセールスから渡されるリードの質に課題があるのかもしれません。

カスタマーサクセス——顧客を「成功に導く」役割

カスタマーサクセスは、The Modelにおいて最も重要でありながら、最も誤解されやすいチームです。従来の「カスタマーサポート」とは根本的に異なる役割を担っています。

カスタマーサポートが「聞かれたら答える」受動的な存在であるのに対し、カスタマーサクセスは「顧客が成功するよう能動的に働きかける」攻めの部隊です。

契約はゴールではなくスタート。顧客がツールを使って成果を出せるよう支援し、解約を防ぎ、さらにはアップセル(上位プランへの切り替え)やクロスセル(追加サービスの提案)を狙います。

このチームのKPIは、解約率(チャーンレート)とLTV(顧客生涯価値)です。特にサブスクリプション型のビジネスモデルでは、新規獲得よりも既存顧客の維持・拡大が収益に与えるインパクトが大きいため、カスタマーサクセスの重要性は年々高まっています。


4つのチームの役割を比較する

ここで、各チームの役割とKPIを整理してみましょう。

チームミッション主要KPI顧客との接点
マーケティングリード(見込み客)の獲得リード獲得数、リード獲得単価Web、広告、イベント等
インサイドセールスリードの育成と商談化商談獲得数、商談化率電話、メール、オンライン会議
フィールドセールス提案と契約締結受注金額、受注率対面またはオンライン商談
カスタマーサクセス活用支援と契約継続解約率、LTV、NPSオンボーディング、定期MTG

この表を見ると、顧客がどのようなジャーニーを辿り、各段階でどのチームが責任を持つのかが明確になります。


The Modelが「最強」と呼ばれる理由——ボトルネックの可視化

この体制を取る最大のメリットは、効率化だけではありません。「どこがボトルネックなのかが一発でわかること」こそが、The Modelの真髄です。

一人の営業マンが全てを担当している状態で「今月売上が未達です」と報告されても、原因が特定できません。アポが取れなかったのか、商談が下手だったのか、既存客の解約が多かったのか、すべてが曖昧なままです。

しかし、The Model型の組織であれば、数字を見るだけで健康診断ができます。

たとえば、リード数は十分にあるのに商談化率が低い場合。これはインサイドセールスのアプローチに課題がある可能性が高い。トークスクリプトを見直したり、ヒアリングの質を改善したりする施策が有効でしょう。

商談数は確保できているのに受注率が悪い場合。フィールドセールスの提案内容やクロージング手法に問題があるかもしれません。あるいは、競合との差別化が十分にできていない可能性もあります。

受注はできているのに、すぐに解約されてしまう場合。これは少し複雑で、カスタマーサクセスの問題である可能性もあれば、そもそもマーケティングがターゲット層を間違えている可能性もあります。「本来のターゲットではない顧客」を無理に獲得してしまっているケースです。

このように、精神論ではなくデータに基づいた改善が可能になること。これがThe Modelの最大の強みなのです。


私がThe Model導入で学んだこと——理想と現実のギャップ

ここで、私自身の経験をお話しさせてください。

数年前、私はあるスタートアップ企業でThe Model型の組織構築に関わりました。当時、その会社は急成長フェーズにあり、「属人的な営業スタイルでは限界がある」という危機感から、The Modelの導入を決断したのです。

最初の数ヶ月は、すべてが順調に見えました。マーケティングがリードを量産し、インサイドセールスがアポを取り、フィールドセールスが商談をまとめる。数字上は、確かに効率は上がっていました。

しかし、半年ほど経った頃から、奇妙な現象が起き始めました。

フィールドセールスのメンバーが、インサイドセールスに対して不満を漏らすようになったのです。「送られてくるアポの質が悪すぎる」「ただの挨拶アポで、商談にならない案件ばかりだ」と。

一方、インサイドセールスのメンバーは「せっかく苦労してアポを取ったのに、フィールドセールスが適切にフォローせずに失注させている」と反論しました。

さらに、カスタマーサクセスからは「営業が『何でもできます』と過剰な期待を持たせて売っているせいで、導入後にクレームの嵐だ」という声が上がりました。

振り返ってみれば、これは典型的な「部分最適による部門間対立」でした。各チームが自分たちのKPIだけを追いかけた結果、全体最適が失われていたのです。


導入時に陥る最大の罠——サイロ化と部門間対立

私の経験は決して珍しいものではありません。The Modelを導入した多くの企業が、同じ壁にぶつかっています。

それぞれのチームが独立したKPIを持っているため、「自分たちの数字さえ達成すれば良い」という意識が生まれやすいのです。

インサイドセールスは「アポ数」を追うため、質よりも量を優先しがちになります。とにかく商談の約束を取り付ければ、自分たちのKPIは達成できる。その商談が成約に繋がるかどうかは、フィールドセールスの責任だと考えてしまう。

フィールドセールスは「受注」を追うため、顧客の本当のニーズよりも契約を優先しがちになります。「とりあえず契約さえ取れれば」という姿勢で、導入後のことはカスタマーサクセスに任せようとする。

カスタマーサクセスは「解約防止」に追われ、本来やるべき「顧客の成功支援」に手が回らなくなります。前工程で生まれた歪みの尻拭いに忙殺されるのです。

これが、The Model導入企業の多くが経験する「サイロ化」の現実です。


サイロ化を防ぐための処方箋——共通言語としての「レベニュー」

では、この問題をどう解決すればよいのでしょうか。

最も重要なのは、「レベニュー(収益)」という共通言語を持つことです。

各チームが自分たちのKPIだけを見るのではなく、最終的な売上、そして「顧客の成功」に全員が責任を持つ文化を作る。アポ数やリード数は、あくまで収益を生み出すための「中間指標」であって、それ自体が目的ではないという認識を組織全体で共有するのです。

具体的な施策としては、以下のようなものが有効です。

まず、部門横断の定例ミーティングを設けること。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの責任者が同席し、同じダッシュボードを見ながら議論する場を作ります。

次に、「リードの質」に関するフィードバックループを構築すること。フィールドセールスが「このリードは良かった/悪かった」という情報をインサイドセールスに戻し、インサイドセールスはその情報をもとにアプローチを改善する。さらに、カスタマーサクセスからの情報(「どんな顧客が長期継続しているか」)をマーケティングにフィードバックし、ターゲティングの精度を高める。

そして、可能であれば、CRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)のようなポジションを置くことも検討すべきです。各部門の上位に立ち、全体最適の視点から意思決定を行う役割です。


The Modelは「型」ではなく「哲学」である

ここまで読んでいただいた方には、The Modelが単なる「組織図の変更」ではないことがお分かりいただけたと思います。

The Modelの本質は、「顧客の購買プロセスに合わせて、最適なタイミングで、最適な情報を提供する」という顧客中心の哲学です。そして、それを支えるためのデータドリブンな運用基盤です。

Salesforce社の創業者であるマーク・ベニオフは、「顧客の成功こそが我々の成功である」という言葉を残しています。この思想がThe Modelの根底にあることを忘れてはいけません。

分業制という「型」だけを真似ても、うまくいかないのは当然です。なぜその分業が必要なのか、それぞれのチームが何のために存在しているのか、その「Why」の部分を組織全体で共有できているかどうかが、成否を分けるのです。


よくある質問(FAQ)

Q1: The Modelは大企業向けの仕組みではないですか?

そんなことはありません。もちろん、4つのチームをすべて独立させるには一定の組織規模が必要ですが、考え方自体は小規模なチームでも応用可能です。一人の担当者が複数の役割を兼務しながらも、「今は見込み客を集める活動をしている」「今は商談をクロージングする活動をしている」と意識的に切り分けるだけでも、業務の質は向上します。

Q2: インサイドセールスとテレアポの違いは何ですか?

テレアポが「とにかくアポを取ること」を目的としているのに対し、インサイドセールスは「顧客の課題をヒアリングし、確度を見極めること」を目的としています。つまり、「アポを取らない」という判断もインサイドセールスの重要な仕事です。まだ購入のタイミングではない顧客に無理にアポを押し付けても、商談化率は上がりません。

Q3: カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いは?

カスタマーサポートは「顧客から問い合わせがあったら対応する」受動的な役割です。一方、カスタマーサクセスは「顧客が成功するよう能動的に働きかける」役割を担います。問い合わせを待つのではなく、利用状況をモニタリングし、活用度が低ければ自らアプローチして支援を行います。

Q4: The Model導入にはどんなツールが必要ですか?

最低限、CRM(顧客関係管理)ツールとMA(マーケティングオートメーション)ツールは必要です。Salesforce、HubSpot、Marketoなどが代表的です。ただし、ツールを導入すればうまくいくわけではありません。まずは「各部門が同じ顧客情報を見られる状態」を作ることが先決です。

Q5: The Modelを導入すると、どのくらいで効果が出ますか?

組織の規模や現状によりますが、一般的には効果を実感できるまでに6ヶ月から1年程度はかかると考えてください。特に、これまで属人的な営業スタイルだった組織では、文化の変革に時間がかかります。短期的な成果を求めすぎると、「やっぱり従来のやり方に戻そう」という揺り戻しが起きがちです。


まとめ——型を真似るのではなく、哲学をインストールせよ

The Modelは、単に「営業とテレアポ部隊を分ける」という組織図の話ではありません。

顧客の購買プロセスに合わせて、最適なタイミングで、最適な情報を提供する。そして、そのプロセスを数値で可視化し、データに基づいて改善し続ける。これがThe Modelの本質です。

もしこれから組織への導入を検討されるなら、まずは「ツールを入れる」ことよりも、「営業、マーケ、CSが定例ミーティングで同じ数字を見ながら会話する」ことから始めてみてください。

部門の壁を越えてバトンがスムーズに渡ったとき、組織の成長スピードは劇的に加速するはずです。そして、それは「根性」や「気合」ではなく、「仕組み」によって再現可能な成長になります。

「なぜ売れたのか」「なぜ売れなかったのか」を説明できる組織。それこそが、The Model型組織が目指す姿なのです。

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