“活動ログ”を残す最小実装:メール・予定・メモを1本に統合する設計と運用
顧客管理で「誰が、いつ、何をしたか」を追えるようにするだけで、追客漏れは大幅に減ります。 本記事では、CRMを入れ替えずにGmail・Googleカレンダー・メモを活動ログとして束ねる最小実装を解説します。設計の肝は「会社ドメイン」を紐付けキーにすること。本文は保存せず、索引と原本へのリンクだけを残し、会社名やドメインで検索したときに関連情報が一通り出てくる状態を目指します。完璧な名寄せより「検索できる程度」で十分です。
顧客管理において、「誰が、いつ、何をしたか」を追えるようにするだけで、管理体制は格段に崩れにくくなります。顧客マスタや案件ボードをどれだけ丁寧に整えても、活動履歴(ログ)が薄ければ、追客漏れは消えません。
本記事では、CRMを入れ替えることなく、Gmail・Googleカレンダー・メモを最低限のルールで束ね、あとから検索できる活動ログとして残す「最小実装」の方法を解説します。
活動ログがないとどんな問題が起きるのか
活動ログがない状態とは、顧客管理が単なる「住所録」で止まっている状態です。現場で発生するトラブルには、共通したパターンがあります。
たとえば、会議後の「次の一手」が記録されずフォローが遅れるケース。担当者が変わったときに「どこまで話が進んでいたか」を引き継げないケース。同じ説明を何度も繰り返して顧客の信頼を損ねるケース。見積・契約・請求といった重要メールがバラバラに散らばり、締め処理が遅れるケース。
活動ログは、入力の手間を増やすためのものではありません。「思い出す」というコストを消すためのものです。過去のやり取りを探し回る時間、記憶を掘り起こす労力——これらを削減できるかどうかが、ログの価値を決めます。
最小実装のゴールは「1社1ページ」ではなく「1社1検索」
「会社ごとの詳細ページを作ろう」と最初から構えると、設計が重くなり、たいてい挫折します。最小実装のゴールは、もっとシンプルで構いません。
目指すべきは、会社名またはドメインで検索したときに、関連するメール・予定・メモが一通り出てくる状態です。「ログを貯める箱」と「検索できる鍵」さえ揃えば、活動履歴の運用は回り始めます。
設計の肝は”キー”を決めること
メール・予定・メモを統合するには、共通の「紐付けキー」が必要です。どのキーを採用するかで、運用の安定度が大きく変わります。
キーの優先順位
現実的で壊れにくい順に並べると、まず会社ドメイン(例:example.co.jp)が最も推奨されます。次に、会社マスタ内の一意IDである会社ID。これは運用が育ってきた段階で導入するのが適切です。最後に会社名の正規名ですが、表記ゆれが発生しやすいため、単独のキーとしては使わない方が無難です。
最小実装の段階では、「ドメインを最強のキーにする」という方針が安定します。メールには送信元・送信先のドメインが自然に含まれているため、入力の手間を増やさずに統合しやすいのが理由です。
最小のデータ構造:ログは”イベント”として揃える
活動ログは、メール・予定・メモと種類は異なっても、構造は共通化できます。最小構成として押さえておきたいのは7項目です。
活動ログに必須の7項目
event_idは一意キーで、URLやmessage-idで代用しても問題ありません。company_keyは会社を表すキーで、最初はドメインを推奨します。person_keyは相手個人を示すもので、メールアドレスが最も確実です。typeはemail、calendar、memoのいずれか。occurred_atは発生日時で、送受信日時や開始時刻、メモの作成時刻を記録します。titleには件名、予定タイトル、メモの先頭1行を入れます。source_urlは元データへのリンクで、GmailスレッドURL、カレンダーURL、メモURLなどを格納します。
ここで重要なのは、本文全部を保存しないことです。最初は「見つけるための索引」で十分であり、詳細が必要になったときにsource_urlから原本へ飛べれば事足ります。
実装ステップ1:メール(Gmail)をログ化する
メールは活動ログの中心になります。最小ルールは「スレッド単位で会社キーを決めて残す」というものです。
スレッド単位での管理が現実的
顧客対応は基本的に往復のやり取りが前提なので、1通ずつ管理するよりスレッド単位の方が実用的です。スレッドの代表情報として持っておきたいのは、スレッドURL、最新メール日時、件名、関係者(From/To/CCの主要アドレス)、そして会社キー(ドメイン)です。
ドメイン抽出の考え方
ドメインを抽出する際、gmail.comなどのフリーメールは会社キーとして使わないようにします。取引先候補のドメインが複数存在する場合は、自社ではなく相手側のドメインを優先します。判断がつかない場合は「保留」扱いにして、後から人が補正できる余地を残しておきます。
最小実装では完璧な判定を狙わない方がうまく回ります。誤判定よりも「未判定で残る」方がまだマシです。検索できなくなることが一番つらいからです。
実装ステップ2:予定(Googleカレンダー)をログ化する
予定をログ化する最大のメリットは、「会議後の追客漏れ」を潰せることです。ここでもシンプルな構成を心がけます。
予定ログに残す項目
記録すべきは、予定URL、開始・終了時刻、タイトル、参加者メール(ゲスト)、会社キー(参加者のドメインから推定)、そして必要に応じてMeetリンクや場所です。
ここで重要なのは、予定タイトルを綺麗に整えることではありません。参加者のメールアドレスを必ず入れる運用を徹底することです。参加者メールが登録されていれば、ドメインを通じて会社に自動的に紐付きます。
実装ステップ3:メモをログ化する
メモは自由度が高い分、放置すると検索不能になりがちです。最小実装では、メモを「フォーマットで縛る」のが近道です。
メモテンプレートの最小構成
テンプレートに含めるべき項目は、会社名とドメイン、相手の名前とメールアドレス、要点、次のアクション、期限です。たとえば「会社:株式会社〇〇(ドメイン:example.co.jp)」「相手:山田太郎(メール:yamada@example.co.jp)」といった形式で記載します。
ここまで書ければ十分です。ポイントは「会社キー(ドメイン)」が必ず入ること。メモアプリ自体は何を使っても構いません。検索できる形で保存されていれば、それで勝ちです。
統合の見せ方:1つのタイムラインに混ぜる
メール・予定・メモが揃ったら、表示方法は難しく考える必要はありません。会社キーごとに、occurred_at(発生日時)で降順に並べるだけでタイムラインが完成します。
たとえば、今日は見積依頼メール、昨日は定例MTG(カレンダー)、3日前はヒアリングメモ、先週は提案書送付——このように時系列で並ぶだけで、「その会社と何が起きているか」が一目で把握できるようになります。
運用で詰まりやすい3つの落とし穴と回避策
ログを残す目的が曖昧になる問題
「なんとなくログを残そう」では、結局誰も見なくなります。回避策は、用途を一つに絞ること。おすすめは追客漏れ防止です。「会議のあと、次のアクションが残っているか」——この一点だけチェックする運用にすれば、ログの価値がすぐに実感できます。
完璧な名寄せを目指して止まる問題
すべてのデータを完璧に紐付けようとすると、手が止まります。最小実装は「検索できる程度」で十分です。未判定や保留が残っても、後から補正できる設計にしておけば問題なく進められます。
メモが自由すぎて検索できない問題
テンプレートを用意して、最初の1行に必ず会社キーが入るルールを設けます。「きれいな文章」より「見つかること」が優先です。
導入チェックリスト
最小実装を始めるにあたって、確認しておきたいポイントをまとめます。
会社キーはまずドメインを採用すること。ログはメール(スレッド)から始めて、予定、メモの順で増やしていくこと。保存するのは本文ではなく、索引と原本へのリンクであること。そして、会社名またはドメインで検索したときに、メール・予定・メモが一通り出てくれば合格です。
次にやると効く改善
最小実装が回り始めたら、次は「次アクション」をログから拾えるようにすると、運用が一段階上がります。
具体的には、会議メモに「次アクション・期限」を必須項目として設ける、予定終了後にメモ作成を促す仕組みを入れる(手動でも可)、期限が近いものだけを一覧化する、といった施策が効果的です。
活動ログが「貯まる」だけで終わらせず、追客が自然に回る導線へと育てていくことが、この仕組みを活かすポイントです。