【保存版】会社マスタの設計ガイド|法人名ゆれ・支店・部署の扱い方を徹底解説
会社マスタの崩壊は、法人名ゆれ・支店の別会社登録・部署情報の混入という3つの原因から始まります。 本記事では、これらを防ぐ最小設計ルールを解説。会社名は「正式名称」「表示名」「正規化名」の3つに分け、支店・部署は会社名に混ぜず所属として別管理します。会社IDを主キーにすることで社名変更にも強い構造になります。登録フローと禁止事項を明文化すれば、自由に入力しても裏側で揃う状態が実現できます。
「会社名が揺れて検索に引っかからない」「同じ会社なのに別会社として登録されている」「支店や部署が混ざって案件が追えない」——スプレッドシートや簡易CRMで顧客管理をしていると、ほぼ確実にぶつかる問題です。地味ですが、放置すると営業活動や請求処理に深刻な影響が出ます。
会社マスタ(企業の基本情報をまとめた台帳)を一度しっかり設計しておくと、名寄せが安定し、営業・カスタマーサクセス・経理など部門を横断した情報活用ができるようになります。逆にここが曖昧なままだと、どれだけ列を増やしても運用は破綻します。
この記事では、法人名ゆれ・支店・部署を現実的に扱うための、最小で効く設計ルールをまとめました。特定のツールに依存しない考え方なので、どんな環境でもそのまま使えます。
会社マスタが壊れる3つの原因
会社マスタの崩壊は、だいたい次の3つから始まります。どれも「あるある」ですが、根本原因を理解しておくと対策が立てやすくなります。
法人名ゆれが増殖する
「株式会社」と「(株)」、全角と半角、スペースの有無、旧社名、ブランド名。入力する人の数だけ表記パターンが生まれていきます。こうなると検索しても引っかからない、集計しても数字が合わない、名寄せしようにも候補が多すぎる、という状態に陥ります。
支店・事業所が”別会社”として登録される
「○○株式会社 札幌支店」が親会社とは別の企業として登録されてしまうケースです。すると取引履歴が分裂し、与信判断や商談の温度感が正しく見えなくなります。同じ会社との取引なのに、データ上は別々の会社と取引しているように見えてしまうわけです。
部署・担当者情報が会社名に混入する
「○○株式会社 〇〇事業部」「○○株式会社 人事部」といった形で部署名が会社名欄に入ると、会社単位の集計が崩れます。さらに厄介なのは、担当者が異動したタイミングで情報の追跡ができなくなることです。
会社マスタ設計で最初に決めるべき”粒度”
会社マスタを設計するとき、最初にやるべきは「会社」という言葉の解像度を揃えることです。ここを曖昧にしたまま進めると、あとから必ず揉めます。
会社の最小単位を「法人」に寄せる
原則として、会社マスタの1行(1レコード)は法人(登記上の法人)を基本にします。支店や部署は会社ではなく「所属」として別に扱うという考え方です。
具体的な階層構造としては、会社マスタに法人(親)を置き、その下に拠点マスタとして支店・事業所(子)、部署マスタとして部門(子)を配置します。担当者(人物)は、会社(法人)と所属(拠点/部署)の両方に紐づける形になります。
この階層を最初に決めておくだけで、情報が増えたときに破綻しにくくなります。
法人名ゆれを潰す「3つの名前」設計
会社名を1つのカラムに全部押し込もうとすると、必ず壊れます。おすすめは「3つの名前」を持たせる設計です。
正式名称(登記名)
契約書・請求書・与信など、法務や経理が困らないための名前です。ここはブレさせてはいけません。「株式会社〇〇」が正しい表記であれば、「〇〇(株)」や「㈱〇〇」、「株式会社〇〇(〇〇事業部)」といった表記は誤りとして扱います。
表示名(社内で呼ぶ名前)
現場が使いやすい名前です。略称やブランド名を許容することで、検索性が上がり、社内の会話もスムーズになります。「〇〇」「〇〇社」「〇〇(ブランド名)」など、呼びやすい形で登録できるようにします。
正規化名(名寄せ判定用)
システムで比較するための「整形済み」の文字列です。人が読むためではなく、重複判定の精度を上げるために作ります。
具体的には、「株式会社」「(株)」「有限会社」などの法人格、全角/半角の揺れ、スペース、記号、「支店」「営業所」「事業部」などの所属ワードを削除します。所属に関する情報は別カラムに移動させます。
この3つを分けることで、入力の自由度とデータの一貫性を両立できます。「現場が入力しやすいけど、裏側では揃っている」という理想的な状態が実現します。
支店・事業所の扱い方:会社名に混ぜない
支店や営業所を会社名欄に入れてしまうと、取引履歴が分裂しやすくなります。解決策はシンプルで、拠点は別マスタにするか、最低限でも別カラムに逃がすことです。
最小構成でも効果は出る
スプレッドシートでも実現できる最小構成として、会社ID(法人ID)、会社名(正式)、会社名(表示)、拠点名(例:札幌支店、名古屋営業所)、拠点住所(任意)を用意します。
ポイントは「札幌支店」を会社名に入れないこと。会社としては同一でも、活動履歴や担当者の所属は拠点に紐づく、という整理ができるようになります。
「支店を別会社扱いする」例外ルールを決めておく
現実には、支店が実質別会社のように動くケースもあります。取引条件が完全に別、請求が別、商流が別など。この場合は、例外として「別会社レコード」にするルールを先に決めておきます。
おすすめの例外条件は3つあります。まず契約主体が別(別法人)の場合。次に請求先が別(経理処理が別)の場合。そして予算決裁が完全に別(商談が混ざると危険)の場合です。
例外を決めずに現場判断に任せると、半年後にはデータがカオスになります。
部署の扱い方:「所属情報」であり「会社名」ではない
部署は頻繁に改組されます。会社名欄に入れてしまうと、改組のたびに「会社が増殖」していくことになります。
部署情報は人物や案件に紐づける
会社マスタに部署を持たせるよりも、担当者(人物)に部署名を持たせるか、案件(商談/プロジェクト)に担当部署を持たせる方が壊れにくい設計です。
部署は「その時点の所属」を表すだけなので、会社マスタに固定で持たせると矛盾が増えていきます。
部署名も軽く正規化しておく
部署名も「第一営業部」「営業1部」「営業一部」など表記が揺れます。ここは厳密にやりすぎる必要はありませんが、最低限「表記ゆれはまとめる」程度の正規化をしておくと、あとの集計作業が楽になります。
会社ID設計:会社名より先に”キー”を決める
会社マスタを安定させる最大のコツは、会社名ではなく会社IDを主キーにすることです。会社名は変わりますが、IDは変えません。
会社IDはシンプルな採番で十分
凝ったルールを作るほど破綻します。C000123のような連番で十分です。
会社名ゆれの統合は「会社IDに寄せる」ことで実現します。旧社名は同じ会社IDに紐づけ直し、略称は表示名として残し、入力ミスは正規化名で検知して修正する。この流れでデータを整理していきます。
運用ルール:登録フローを決めないと必ず増える
設計だけしても、登録が自由だとデータは増殖します。最小限の運用ルールで止血しましょう。
新規会社登録の前に必ずやること
「まず検索する」。これだけで重複が激減します。検索対象は表示名ではなく正規化名(またはそれに近いもの)がおすすめです。
会社名欄に入れてはいけないものを明文化する
運用ルールに一文でいいので書いておきます。会社名欄に「支店・営業所・事業部・部署名」を入れない、「担当者名・敬称」を入れない、原則として登記名(またはそれに準ずる表記)にする、といった内容です。
禁止事項がないと、入力者は善意で情報を詰め込み、結果としてマスタが壊れます。
統合(名寄せ)担当者を決める
「気づいた人が直す」という運用は続きません。週1回でもいいので、重複候補を見て統合作業をする担当(ロール)を決めると、データが健全に育っていきます。
ありがちな失敗パターンと回避策
社名変更で別会社ができてしまう
会社IDを維持したまま、正式名称だけ更新するのが正解です。旧社名は別カラム(旧社名)や別名リストとして残しておくと、検索性が落ちません。
グループ会社・持株会社で混乱する
これは「関係性」として持たせます。会社マスタに「親会社ID」や「グループ名」などのカラムを追加すると、横断集計がしやすくなります。会社名欄に「○○グループ」を混ぜない方が安定します。
部署を会社扱いしてしまう
会社=法人、所属=部署/拠点。この原則を徹底します。どうしても組織単位で管理したい場合は、「部門マスタ」を作り、会社IDに紐づける形にしましょう。
まとめ
会社マスタは「現場に厳しく入力を強制する」のではなく、自由に入力しても裏側で揃うように作るのが現実的なアプローチです。
設計のポイントを振り返ると、会社名は「正式名称」「表示名」「正規化名」の3つに分けること、支店・部署は会社名に混ぜず所属として扱うこと、会社IDを主キーにして社名変更やゆれに強い構造にすること、登録フローと禁止事項を短くても明文化すること。この4点を押さえておけば、データは壊れにくくなります。
ここまで整えば、次のステップとして「活動履歴(メール・予定・メモ)」を会社IDに紐づけるだけで、顧客管理が一気に実用的な形になります。会社マスタは地味な存在ですが、顧客データ設計の土台です。土台を固めてから上を積む方が、結局いちばん速く、確実に成果が出ます。